メドレーズ2~Montage~
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A5サイズ 44ページ 『獣のはらわた』から地上へ抜け、霧払いの街灯がぽつぽつと路面を照らす通りを歩く。数あるカトレアの「家」の一つへ、まずは落ち着くことにしよう。シャワーを浴びて、いや、今夜はバスタブに湯を張って、お気に入りの入浴剤をたっぷり振り入れて寛ごう。 そんなことを考えながら、カトレアは五階建てのアパルトメントの四階まで上がり、鍵を開けようと扉に――、そこで違和感を覚えドアノブから手を放す。 周囲を見渡すと、用心の為に扉へ挟んでおいた紙片が床に落ちていた。誰かが、自分以外の何者かがこの扉を開けたに違いない。手持ちの灯りで照らしながら扉の隙間を覗き込むと、確かに施錠はされている。 ドアノブを捻った途端に爆発……なんてことになってはたまったもんじゃない。カトレアは、扉の床に近い部分にある壁のレンガをずらして、中に隠してあったレバーを引く、そうすれば扉が外枠ごと開くように改造しておいたのだ。 壁を背にしたまま、そっと、拳がひとつ入るくらいまで開き、手鏡を使って扉の内側を確認する。ワイヤーや爆発物の類が仕掛けられた形跡は見当たらない。暗視ゴーグルを着けてから、部屋の中へするりと滑り込む。人の気配はないようだ。 (“カトレアの娘”より抜粋) 霧深い世界に住むひとたちの悲喜こもごも。 女王国サイドに加え、今回は帝国サイドのお話も収録した短編集です。 この作品は、青波零也さん(@aonami)著作『錯綜レトロスペクト』『はらわたの散歩者たち』と、世界観並びにキャラクターをシェアさせていただいております。 青波零也個人サークル:シアワセモノマニア http://happymonomania.sakura.ne.jp/