改訂版さねげんガイドブック
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これはさねげん民によるさねげん考察本です。 数年前に新刊のおまけとして出したコピー誌を更にパワーアップしました! 原作からスピンオフまで、強火さねげん解釈・考察を大正時代の豆知識を踏まえてまとめました。少しばかりの漫画もあります。 A5版・86 P 2025/5/25 広島コミケ259にて頒布いたしました。 18Pのコピー冊子(追加分考察と掌編)とチェキ風ラミネートカードが一枚(ランダム柄)が付きます。
【コピー誌】百年藤【掌編サンプル】
肌がピリピリとひりつくような冬の朝。一羽の鴉がふわりと更地に舞い降りた。山の斜面にぽっかりと空いた日当たりの良いその地面へ嘴で器用に穴を空けると、白い小さな小石のようなものをぽとりと落とす。よくよく見れば、それは象牙色の人の歯であった。 鴉は脚で土を掛けると、何度か確認するように首を動かし、やがてバサバサと翼を羽ばたかせ再び空へと飛び上がっていった。 鬼舞辻無惨を倒し、積年の悲願を成就させた鬼殺隊。その当主であった御館様の屋敷があった場所から少し離れた場所に、一本の藤の花が芽を出した。不思議なことに、その藤は瞬く間に成長し、一週間も経たぬうちに大きな自然の藤棚が出来上がっていた。 御館様の警護のために残った元隠が、里の周囲を巡回していた際に見つけ、報告が上がってきたのが二日前の話だ。 無惨と最後まで戦っていた隊士の殆どは、まだ傷がいえていない。片腕を無くしているとは言え、元柱である宇髄が適任であろうと、一人単独で様子を見に行くことにした。 果たして、件の藤棚は藤襲山に負けずとも劣らない立派なものだった。けれど一月前には何もなかった場所だ。警戒するに越したことはない。血鬼術ではないにしろ、何らかの怪異に間違いはないのだ。 宇髄は慎重に藤の花を見分する。特に怪しい気配や殺気は感じない。野生の獣たちも無警戒でウロウロしていた。 少しばかり歩くと、藤棚の中央に当たる場所に立派な大木が生い茂っていた。これが主木か。一月もたたぬうちに、これほどの木に成長するとは。やはり怪異のそれだろうか。 そっと太い幹の表面を調べると、奇妙な凹凸がある。まるで人の顔を削り出したかのようだ。……なんだこれは。高い鼻梁とつるりとした形良い額。薄い唇は今にも話し出しそうな艷やかさ。 ———この相貌、知っているな。 岩柱のところで何度かすれ違い、柱稽古で少しだけ話をしたのが最後だ。呼吸が使えない代わりに鬼を喰うという派手な能力はわりかし気に入ってた。 「虹丸、御館様に報告だ」 肩に止まっていた鴉は、心得たとばかりに空へと飛び上がった。