オレンジの祝福

好き嫌い　と　一括りにしてほしくない 生まれる前から刻まれた こだわりなのだから たとえばサンドイッチに マーガリン　バターいらない 粒マスタードは忘れずにつけてね 風が草を　わたっていく うすうらさき色の花が 揺れている 夏の気配が　今年もまた オレンジの木に白い花 いつまでもつのか　純粋さ レモネードのグラスに　キラキラ光 わかったような顔しながら　何もわかってない 血のつながる家族の心すら　わからないのに それでもなぜか　最後には 近くにいる 他愛のない話も沈黙も　苦にならない 昔のこと　思い出せば 緑色のクロス敷いて　昼食を 夏の気配が　今年もまた 汗すらかかぬ　薬指 選んだ未来に佇んで 鮮やかに匂い立つ　オレンジの実