【翠緑の姫騎士のメイドな日常20】~翠緑メイド ミューラ~(300枚まとめ)
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ある日の夜、私が館の自室でのんびりとしている時だった。 館のすぐ近くの森の中から激しい戦闘音が響いてきた。 「…また盗賊の類か?」 「はい、そのようです」 独り言を呟いただけだったのだが、いつの間に部屋の中に入り込んでいたのか、ミーティアが私のすぐ近くに立って答えていた。 まぁ、これもいつもの事だ。 さすがは高ランクの冒険者数人と戦い抜ける実力を持つ、元暗殺者だ。 「ミーティアがここにいるという事は…今回はミューラが出迎えに行ったのか」 「はい。ミューラさんの晶術で不審者を感知したとの事で向かわれました」 「晶術の感知に引っかかるような相手なら…まぁ大した相手では無いか。ミーティアはその報告に来たのか?」 「はい。それと、お茶のお代わりをお持ちしました」 言われてふとテーブルの上に置かれているカップを見ると、いつの間にか空になっていた。 あまり気にしていなかったが、そう言えばつい先ほど飲み終えたのだったか。 「相変わらず、ミューラに劣らず凄いメイドレベルだな」 「お褒め頂き、恐悦至極でございます」 無表情のまま小さく頭を下げるミーティア。 そのまま静かにティーカップへお茶を注ぎ、一礼してから部屋を出ていった。足音どころか扉の音すら出さずに。 「…全く、本当にミーティアの実力はいつまで経っても驚かされるよ。さて、ミューラの方はどうなっているのか…」 小さく笑みを浮かべたまま、私は窓から戦闘を行っているであろう森の中へと視線を向けるのだった。 場所は代わり、時間は少しだけ戻る。 私は森の中に防衛として仕込んである晶術の反応から、何者かが館へと向かってくることに気付いていた。 「ミーティアさん。森の中に不審者の反応がありました」 「人数はどれほどでしょうか?」 「おそらく10人に満たないでしょう。晶術の仕掛けに気付いた様子もないので、大した手練れでもないかと」 「分かりました。防衛に向かいます」 「いえ、今回は私が向かいますので、念のため館内で待機をお願いできますか? 今日は私も少し動きたい気分ですので」 「分かりました。不要だとは思いますが、ご武運を」 私はミーティアさんに軽く現状報告を伝えた後、即座に館を飛び出して森の中の反応があった地点へと向かう。 現在の装備は、普段のメイド服のみ。 とは言え、晶術の発動体となるエメラルドは所持しているし、そもそもメイド服の各所にも縫い付けてある。 ただ家事をするためではなく、いつ戦闘になっても大丈夫なように準備は万端であった。 「ご主人様の名声から、留守中に館にある金目の物を狙う輩が多いのも困りものですね。さて……」 場所は分かっているため、すぐに盗賊であろう不審者の元に到着した。 月光の漏れる明るい場所に陣取り、顔を隠した盗賊8人に相対する。 私は小さく笑みを浮かべてスカートを摘まみ、優雅に挨拶した。 「初めましてお客様。これより先は、私のご主人様が住まうお館です。招かれていないお客様をこの先にお通しするわけには参りません」 視線を盗賊達に巡らせると、盗賊達は武器を手にしてこちらの様子を伺っている。 「このまま大人しく帰られるのならば良し。もしもこれ以上先に進まれるのであれば…」 私は笑みを消し、胸元のエメラルドを用いて晶術を起動して武器を一瞬で作り出す。 「力づくで鎮圧させて頂きますので、ご容赦を」 そうして私は襲い掛かってくる盗賊達を一人残らず撃退するのだった。 -+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+- 皆さんこんにちは! 今回はきちんとミューラが活躍するような小話を作成しました。 普段のメイド服姿でも戦闘をすることがあるような設定なので、晶術に必要なエメラルドがメイド服に装飾されています。 もちろんそれとは別で普段から持ち歩く分もありますし、イヤリングなどの装飾品もエメラルドがついていますので、 完全に素っ裸にならない限りは晶術が使えなくなることはありません! なお、今回の盗賊はただの木端なので、人数差など関係なくミューラ一人でも一蹴できます。 きっと翌日ミーティアと一緒に、街を警備する騎士団に突き出すでしょうね。 ではでは、また次回もお楽しみに!!