かみふうせん39号
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「京都大学児童文学研究会かみふうせん」のメンバーによる、2025年度の短編作品集です。 以下は掲載作品紹介です。全十二作品 『朝』超文学宣言 水族館の泡が空へひらけていく瞬間から始まる、静かで澄んだ詩です。 ひらがなの柔らかさとともに、風景の中にある朝の気配が伝わってきます。 『保健室の民』佐倉紺 学校の中でも普段はなかなか立ち入ることのない保健室でのふとした出会い。 本の話を交わして心が近づく瞬間。いつか忘れてしまうような些細な出来事。 それでも、そのひとときに流れた余韻が、胸の奥にひっそりと残り続けるような小説です。 『愛人』佐藤智紀 母と子のねじれた距離感が、重く清らかな筆致で語られています。 夕食から始まる二人の時間は、読み進めるうちに甘美さと不安を帯びていき、読後には言葉にしがたい余韻が残ります。 『光る島』小林澄 地下鉄で通学する朝のひととき。 そんなごく日常の時間にふと訪れる発見が、素直なまなざしで描かれています。 筆者の軽やかな語り口に惹き込まれる作品です。 『我が家の犬のこと』田中碧 筆者の愛犬ナッツとの日々を、ユーモアを交えて綴ったエッセイです。 後半では、老いていくナッツとの距離を思いながら、筆者自身のこれからについての揺らぎが素直に綴られます。 家族として過ごす記録が、今しか書けない形で結ばれた一編です。 『小さな灯り』橋本陸路 孤独の中にいる主人公の視点から、夜の光や音、生活の細部が映画のように切り取られ連なる。 擦り切れていく世界の中で、それでも誰かとの生活から溢れる微かなぬくもりを感じる物語です。 『人でなしの恋』黒瀬ゆき 恋にどんな印象を抱いていますか?楽しいもの、美しいもの、ずはらしいもの……。 「世界が輝いて見える!」という人もいるかもしれません。 本作は、恋に対してこのような良い印象を抱くことができなかった「人でなし」のお話です。 ぶっきらぼうなようで温かい語りにご注目ください。 『ある海辺の温泉宿について』蒋草馬 叔母からの頼みで、とある村へ出かけることになった著者。当日予約で泊まれる宿を見つけるも、そこには「完全ワケアリ!」の文字があった。 著者が実際に体験した、何かがじわりと忍び寄ってくるような不穏さを孕んだ旅の記録をお楽しみください。 『霧をつぶさに見ようとしてみて』米谷一葉 小説を書こうとすると、登場人物は自分の代弁者にしかなりえない。そんなことに意味はあるのだろうか。それとも、本当は意味なんてなくても良いのだろうか。 本郷と長谷、二人の言葉が交差する放課後は、曖昧で、儚くて、きらきらと輝いている。まるで霧のような青春の一幕です。 『私たちのベンチ』中野花菜 どうして学校にはたくさんのベンチが置かれているのでしょうか。もしかしたら、あのたくさんのベンチは、居場所がないようであって、あるようでない人たちの居場所なのかもしれません。 優しくて丁寧な文体はどこか懐かしく、読む人を前向きな気持ちにしてくれる作品です。 『私にとっての紙風船』大谷竜也 文字は偉大だ。過去の人が考えたことを、考えた時間を、そのまま保存するから。 私がまだ紙風船にいなかったころの会員たちは、一体何を考え、どのように児童文学と向き合っていたのか。私はこの作品を読みながらそんなことを思いました。 紙風船の歴史を感じられる作品です。 『ひみつの図書館』よこちりさこ なんて美しい世界だろう、と思いました。 本という物や図書館という場所に対していつもうっすらと感じている偉大さや畏怖を改めて思い出すことができます。 今回の会誌の表紙も描いてくださっている作者のかわいらしい絵と静謐な物語、そして美しい世界観に注目です。

