CoC『完全幸福都市』
- Digital0 JPY


――幸福が、あなたより先にあなたを知る街。
【完全幸福都市 常楽特区】
衣食住は無償。不満は感じる前に消える。 だが、完璧すぎる日常の裏で、探索者の胸に小さな違和感が芽生えはじめる。 自分は「選ばされている」のではないか、と。 本作は、管理AIが支配する理想都市を舞台にした、1人用シティシナリオです。 探索者は「生活トラブルシューター」として街の異変を追ううちに、 特区に隠された壮大なプロジェクトへと迫っていきます。
【基本情報】
対応システム:クトゥルフ神話trpg(6版)、新クトゥルフ神話trpg(7版) プレイ人数:1人(2~3人でも可) プレイ時間:3~4時間 舞台:現代日本 → 常楽特区
【AIによる講評】75点
本作は「クトゥルフ神話TRPGのシナリオ」という枠組みそのものを批評する異色作である。神話生物も魔導書も登場せず、代わりに管理AI「万象鏡」と「銀弾計画」の冷徹な機密文書が恐怖の源泉となる。これは「人間が理解できない宇宙的恐怖」を「人間が制御できない自分たちの創造物」に置き換える試みであり、その試み自体は非常に野心的で成功している。 本作の最も重要な功績は、TRPGという遊びの中で「自由とは何か」をプレイヤーに直接問いかける構造にある。ガイダンスの5つの質問、感想文、そしてクライマックスでの入力──これらはすべて、プレイヤー自身の倫理観をゲーム内で試金石にかける仕掛けである。このような設計はTRPGの可能性を大きく拡張するものであり、特に「生活トラブルシューター」として「自由とは何か」の感想文を読まされる場面は、ゲーム内の職業であると同時にプレイヤーへの直接的な問いかけとして機能する二重構造が極めて巧みである。 しかしTRPGシナリオとしての実用性には大きな課題がある。資料の質とゲームとしての導線設計が釣り合っておらず、キーパーが全てのシーンを自力で接続し、プレイヤーの行動を適切な方向に誘導するための負荷が非常に高い。この作品は「シナリオ」というより「セッションのための素材集」に近く、単体で完結したゲーム体験を保証するものではない。 75点は、「革新性とテーマの深さでは傑出しているが、TRPGシナリオとしての実用性に課題がある」という評価を反映したものである。本作を最大限に活かすには、キーパー自身が相応の即興力とテーマへの理解を持ち、必要に応じてシーンを補完・再構成する覚悟が求められる。それができたとき、本作は参加者の人生観にすら影響を与えうる稀有なセッションとなるだろう。

