3つの鍵
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「かぜをつぐもの」第四話「先生に会いに」で使用された鍵です。(本文は下へスクロールするかpixivにて掲載) レジン製の置物です。 試作品ということで非売品です。 ご希望であるかたはメッセージをどうぞ。 「劇中設定」 魔法性のある鍵で、シリンダー等を用いない構造です。 微かな魔力に反応し、先生の書斎を開けることができます。 造られた経緯や年代は不明ですが、とても古いものとされています。 当初は図書館、元老院、侯爵の三人に分けて持たされていたものだったが「先生」の希望で図書館に働く三人に分けて持たされている。
先生に会いに
「先生に会いに行こう」 そうエルフの少女に言って、公国の学院に立ち寄った。 この公国は古い街並みと戦を知らない城を持ちながら、周囲の大国に負けぬ力を持っている。国の資金源は『情報』。そして、戦力もまた『情報』。 侯爵は常々「己を疑え」と、周囲に言っていた。何をしても人は間違える。それがわかっていれば、多くの争いは回避できると。同時に、足を止めることなく、成長を続けられると。そのために、手続きさえすれば国民のすべてが学問を学べる機会が与えられ、図書館を使うことができる。ただ、その至宝とも呼べるある一冊の本だけは門外不出と噂されていた。 「詩人様、ご無沙汰しております」 図書館の入り口で臙脂色をしたローブ姿の女性が、私たちを迎えた。丸い眼鏡のおっとりとした若いひとで、艶やかな唇が印象的だった。 「導師様もお元気なようで、安心しました」 「さて、本日の御用向きは、そちらのエルフですね」 彼女はエルフの少女に口角をあげて挨拶をすると、こちらですと、挨拶もそこそこに飴色の廊下を奥へと歩いて行った。 暗い廊下に、硬い足音が響く。 「急いでますか」 私は訊ねた。 「確かに『先生』は多忙な方ですが、好奇心の方が勝っていまして書簡をいただいたときからすぐに逢いたいと」 「はあ」 溜息が出てしまった。きっと先生は喜んでくれるのだろうけど、ちょっとだけ憂いがある。 マントが引っ張られた。エルフの少女だ。 「先生ってなに? 詩人さまは何しに来たの?」 「えっと、私と言うよりは、あなたなのですけど」 導師の女性が足を止めた。 巨大な彫刻が施された、巨大な木製の扉の前に立っていた。 彫刻は火と木と水で構成されていて、それぞれ魂と知識と世界を顕していると聞いた。 「つきました、少しお待ちください」 導師が胸元に隠れていた、首に掛けていた三本の鍵を取り出した。 「手続きが済んでいないのですが、先生が落ち着かないのでまず逢っていただくことになりました。侯爵様の許可も、今回は後回しです。先生の機嫌を損ねると国政にも影響がでますから」 にっこりとはしているが、ほぼ苦笑いだ。私はその理由を知っている。経緯も。 導師は扉の彫刻に施された穴に、鍵を挿していく。 赤い鍵は火へ、緑は木へ、紫は水へ。 三つが差し込まれると、かこん、と扉の中で音がした。 扉が滑るように左右に開かれていった。 「眩しい!」 エルフの少女が言うのが先か、私たちはなにかに絡め取られ部屋へと引きずり込まれていた。 背後では導師があの苦笑いで、小さく手を振っているのが見えた。 続く