ほしあいのそら
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A5 無線綴じ 表紙クリアPP / 156ページ (本文152ページ) この商品はpixivFACTORYの同人誌印刷サービス( https://factory.pixiv.net/books )で印刷・製本されます。 平安中期、顔にも才能にも恵まれ、出自もよろしくエリート街道まっしぐら、まさに白馬ならぬ牛車に乗った王子さまのような青年がいた……。 『源氏物語』の薫にも影響を与えたと見られ、百人一首でも「君がため惜しからざりし命さへ ながくもがなと思ひけるかな」で知られている藤原義孝の、秘めた恋の物語です。 前半はpixivにWeb再録済みの小説、後半は同人誌のみの歴史オタク向け趣味全開の資料編です(画像参照)。
プロローグ
暗い空に届けようとするかのように、竿の先につけた灯火が幾つも幾つも高く掲げられている。今夜、男たちの出払った屋敷の主は女人たちだ。 ふだんは奥に引きこもり、通り過ぎる風すら遠ざけるような姫君たちも、几帳を立て扇を広げつつして簀子間際までやってきて、盆に張った水に星々を映して眺めている。彼女たちが身につけた、闇にも鮮やかな夏の襲かさねまで翻すほどではないものの、風に乗って上品な香りが小川のせせらぎのように流れ出来る。 そう考えれば、頭上にある数々の明かりはまるで水面に集まる蛍のようじゃないかと、少年はふっと笑みを零した。その思いつきを誰かに伝えたかったのだけれど、母と姉妹たちは手元に降りてきた星々に夢中で彼の相手をしてくれそうにもなかった。 早く二の兄上が帰ってくればいいのに。兄弟の中で彼を最もよく理解してくれる年の離れた次兄は、父とともに宮中の行事に侍っていた。 時は文月のはじめ。天上では引き離された男女が年に一度の逢瀬を楽しんでいる。 彼はひとり階(きざはし)に腰掛けて、肘をついた。夜気が心地よい。彼には兄弟が多い。ひとつ年上になる三の兄と、三つばかり下になる弟は池近くに挿した竿の下で遊んでいた。男子である彼らにとって星合は、好きに夜更かしのできる日という以上の意味はないのだろう。 ※以下小説全文はこちら https://www.pixiv.net/novel/series/743011