僕は不意にその時、忘れられない風景と言うのは、案外こういう、身近な日常の中にふと混じっているものなのかもしれないと思った。特別な思い出じゃなくても良いのだ。 　例えば十年後、速水が僕とこうして過ごしたことを忘れてしまうことがあったとしても、それだって、きっと、けして不幸なことなんかじゃないのだ。（第三話本文p62～63より） 【あらすじ】 第三話：『向日葵とゆうだち』 高校最後の夏休み。父のお使いでひだまり商店街に向かった佐渡静は、その帰り道、不思議な青年「ゆうだち」と出会う。気まぐれで買った向日葵の代わりに渡されたのは一枚のハンカチ。やがてそのハンカチを巡り、明かされる真実とは――。 （他、第四話：『マダム・ジュリア』収録） 【本について】 タイトル：『P．S．R．T．＜中＞』 サイズ：A6（文庫） ページ数：128p（表紙4p含む） 第29回文学フリマに参加させていただいた際の作品となります。上・中・下となりますが、上・中は独立した短編集としてもお楽しみいただけます。 また、今回、送料はお客様ご負担となりますので、同イベントで販売していた番外編コピー本『コバルトの涙』を無料特典として同封させていただきます。合わせてお楽しみいただければ幸いです。