聖女様の旅装束
Physical (worldwide shipping)
- 旅装束(黒)9,000 JPY
Physical (ship to Japan)
- 旅装束(黒)9,000 JPY
- 旅装束(茶)9,000 JPY
――罪滅ぼしの旅? わたしの言葉に、彼女は静かに首肯しました。 ――もう誰も、失いたくはないのです。ただ、それだけのことなのだけれど。 そう言って彼女は、憂いをにじませた笑みを浮かべたのです。 わたしの人生で、最後まで味方でいてくれた彼女が、寂しそうに。 その表情を見て、わたしは叫ばずにはいられませんでした。 あなたが罪人であるはずがない、と。 【商品説明】 ======= メガミデバイスとは、ボディ以降の『腕/足/ヘッドパーツと共用』です。 付属しているボディパーツを通じて、着せ替え等をしていただく想定でデザインしております。 ======== ・服が脱がせます。 ・乳房はありますが、乳首はありません。 大事なことなので、二回言います。『乳首』は『ありません』 ・送付物は6 or 7枚目になります。 ・画像の状態にするには別途『メガミデバイス』が必要です。本商品のみでは完成しません。 ・レジンで出来ているようです。 ・レジンを着色して、色味をだしています。 着色する都合上、印刷ロット毎に、多少のばらつきが発生します。 ・塗装はしていません。 ・未塗装でも映えます。ちょっと色を塗ると、もっと映えます。 ・細くて折れやすいので、注意して扱ってください。 ・サポート材の痕は未処理です。 ・仮組は出来ますが、嵌合には調整が必要です。ヤスリや接着剤での微調整をご提案いたします。 ・メガミデバイスと互換性があるように作っていますが、嵌合部の調整は『必ず必要』です。 ・手足やフェイスパーツはサイズ感、使用例です。付属しません。 このページからの購入では、『無塗装』です。 ・表面にベタつきがある場合、陽光で半日ほど天日干しにしてください。 こんな陰鬱な『器具』を、天日干し……? 【購入に際して、事前に確認いただきたいこと】 3Dプリント出力品は、薄さ、細さ、長さに応じて、パーツに反りが発生します。 ――木材や金属より繊細だ、ということはわかりました。 出荷時には問題なくとも輸送時の環境(温度状態)や時間経過とともに反り、変形が経時変化として発生することがあります。 出荷時に検品し、問題なことを確認して発送いたしておりますが、出荷後に変形したものまでは責任を負いかねます。 当ショップの商品は、3Dプリント出力品です。したがって、商品には必ず『個体差』が生じます。 メーカーの射出成型品のような品質をお望みの方には当ショップの製品はご満足いただけない可能性がございます。 ――貴族さま方の言葉は、平民のわたしには知るよしもありませんね。 ご主人様が、わたしたち領民のために商人とお付き合いがあるということだけは理解しました。 ――女の子を『いじめて』『よろこぶ』『悪癖』がなければ、素晴らしいご主人様なのですけれど。 ======とある少女の日記帳より抜粋====== 【聖女様の旅装束】 あなたが謝ることではありません。 あなたに謝って欲しくもありません。 わたしは、助けられて嬉しかったのです。 わたしは、素直に想いを口にします。 あなたに、十全の味方がわたしであると伝えるために。 わたしがついに、『いじめ』られる番が回ってきた、あの日。 『この処刑に異議のあるものは』と司教様が高らかに宣言し、恐怖に押しつぶされそうになったあの瞬間。 ブラジウス広場に集う誰も彼もが、これからわたしの身に起こりうる『喜劇』に、はちきれんばかりの期待を膨らませたあの刹那に。 わたしはやっと、理解したのです。 わたし自身が行ってきたことの罪の重さを。 たとえご主人様の命令であったとしても、誰かを『いじめ』て喜ぶことの行為の愚かさを。 自分の人生に、己の意思で決断することをやめた自分の浅ましさを。 わたしはこの手で、何人もの子たちを。 気まぐれで空想でいっぱいの、若くて豊かで勢いのある子たちを。 悲しみでいっぱいな気持ちにしてしまっていたことを、心から理解しました。 報いだと思いました。 『いじめ』られて当然だと理解しました。 それでも、心は叫びたがっていたのです。 生きたい、と。 しかし、わたしの声は届きません。 はっきりと感じるのです。 わたしが呼吸し、脈打っている自分が存在するという世界と、他の人々との世界の間に悠然として仕切りや靄の存在を。 わたしには、もう見えませんでした。 燦燦と降り注ぐ陽光の暖かさ。清らかな空。愛らしい草花。 それらはすべて鈍色に変り果て、わたしに集まってくる男や女や子供や老人の視線も、すべてが幻想のように思えました。 わたしは願います。 この気持ちを誰かに伝えたい、と。 せめて、最後に、わたしの意思を何かに書き記したい、と。 ですが、そんな自分勝手な願いが、叶えられるはずがありましょうか。 なにせ、このわたし自身が、今までに一度だって、そのような願いを許したことなどないのですから。 司教様は余儀のない微笑を浮かべながら、わたしに、言いたいことはないか、と問います。 わたしは、努めて冷静に、願わくば平静に見えるように顎を引いて司教様を見返しました。 せめて、あの子たちと同じように、誇りを失わずにいること。 これが、わたしに残された、世界に対するささやかな抵抗でした。 わたしは理解しています。 刑の執行は一定の時間内になされねばならぬことを。 また、その時間がもう間もなくに迫っているということを。 わたしはひとりきりで、恐怖に立ち向かうのです。 叫びたてる、恐ろしい民衆。 彼らの悪意が、復讐心が、恐怖が、わたしの喉元へ向かって手を伸ばし、そして。 その時でした。 確かに聞こえたのです。 異議あり、と。 民衆のざわめきに比べてはるかに小さな、しかし透き通った、澄んだ声でした。 あなたは言ってくれたのです。 わたしは、『いじめ』ていたはずの彼女に、助けられたのでした。 だからこそ、わたしは知りたい。 あなたのことを、もっと、深く。 そして、あなたにだけは、笑っていてほしい。 願わくば、あなたが今まさににじませている憂いを、取り除いてあげたいと思うのです。 だからわたしは、言わずにはおられなかったのです。 ――あなたの旅路に、連れて行ってはくれませんか。 断られることは、恐怖でした。 あなたの瞳を見返すことは、処刑台にたったあの時よりもなお、勇気を奮い立たせる必要がありました。 断られたとしたら、それこそどうやって生きて行けば良いのだろう、とすら思いました。 緊張で息ができなくなりそうだったわたしに、彼女は見せてくれました。 憂いを塗り替える、自然な喜びを滲ませながら。 ――こんどはわたしが、あなたを『いじめる』番なんですか? 冗談ですよ、と笑うあなたに。 わたしは心底、参っていることを自覚したのでした。