――人助けを、罪だといいたいのですか？ わたしは、惚けた声をだしてしまいました。 わたしには、なぜ怒鳴られているのかさっぱりわからなかったからです。 異邦人の少女は、憤りをもって、吠え立てるように叫びます。 ひとに傷をつける事が、人助けだと本気でおっしゃっているのですか、と。 【商品説明】 ＝＝＝＝＝＝＝ メガミデバイスとは、ボディ以降の『腕/足/ヘッドパーツと共用』です。 付属しているボディパーツを通じて、着せ替え等をしていただく想定でデザインしております。 ＝＝＝＝＝＝＝＝ ・服が脱がせます。 ・乳房はありますが、乳首はありません。 　大事なことなので、二回言います。『乳首』は『ありません』 ・送付物は6枚目になります。 ・画像の状態にするには別途『メガミデバイス』が必要です。本商品のみでは完成しません。 ・レジンで出来ているようです。 ・レジンを着色して、色味をだしています。 　着色する都合上、印刷ロット毎に、多少のばらつきが発生します。 ・塗装はしていません。 ・未塗装でも映えます。ちょっと色を塗ると、もっと映えます。 ・細くて折れやすいので、注意して扱ってください。 ・サポート材の痕は未処理です。 ・仮組は出来ますが、嵌合には調整が必要です。ヤスリや接着剤での微調整をご提案いたします。 ・メガミデバイスと互換性があるように作っていますが、嵌合部の調整は『必ず必要』です。 ・手足やフェイスパーツはサイズ感、使用例です。付属しません。 　このページからの購入では、『無塗装』です。 ・表面にベタつきがある場合、陽光で半日ほど天日干しにしてください。 　こんな陰鬱な『器具』を、天日干し……？ 【購入に際して、事前に確認いただきたいこと】 3Dプリント出力品は、薄さ、細さ、長さに応じて、パーツに反りが発生します。 ――木材や金属より繊細だ、ということはわかりました。 出荷時には問題なくとも輸送時の環境（温度状態）や時間経過とともに反り、変形が経時変化として発生することがあります。 出荷時に検品し、問題なことを確認して発送いたしておりますが、出荷後に変形したものまでは責任を負いかねます。 当ショップの商品は、3Dプリント出力品です。したがって、商品には必ず『個体差』が生じます。 メーカーの射出成型品のような品質をお望みの方には当ショップの製品はご満足いただけない可能性がございます。 ――貴族さま方の言葉は、平民のわたしには知るよしもありませんね。 ご主人様が、わたしたち領民のために商人とお付き合いがあるということだけは理解しました。 ――女の子を『いじめて』『よろこぶ』『悪癖』がなければ、素晴らしいご主人様なのですけれど。 ＝＝＝＝＝＝とある少女の日記帳より抜粋＝＝＝＝＝＝ とある昼下がりのこと。 清々しいほどに真っ直ぐな意思を持った異邦人の少女が、わたしを訪ねてきました。 もう少し適切に表現するならば、怒鳴り込んできた、といったところでしょうか。 【異邦人の旅装束】 異邦人の少女は言いました。 なぜ、このような『許されざる行為』を放置しているのか、と。 少女は、在らん限りの感情を振るわせて、わたしたちを否定しようとなさいました。 少女は、きっとこの聖都ブラジウスが、おとぎ話の理想郷だと思っていた口なのでしょう。 聖都に生活のために物乞いを強いられる方がいらっしゃるなとど、想像だにしなかったに違いありません。 『収益』を安定してあげるために、己の身体に不幸を『演出』する方々が出てくるのは自然なことでしょう？ 乳飲子を抱えた母親を演じれば喜捨が集まることを発見するのも時間の問題ですよね？ 『怪我』をしている赤ん坊を『作り出して』『貸し出す』ことで利鞘を得ようとする方々が現れても、それはもう仕方のないことだと思いませんか？ わたしだって、誰もが幸せになれれば良いと思います。 しかし、現実に、すべてのひとが等しく豊かになることはありえないのです。 現実にはどこかで折り合いをつけて、皆が生き残る道を探さねばなりません。 だから、わたしは諭すように伝えます。 早く過ちに気づいて欲しいと思いながら。 そうでなければ、わたしはあなたと、もっと深く、『お話し』なりませんから……。 ――この街は、法と秩序と信仰に基づいて、おだやかな日々を過ごせているのですよ？ そんな言葉に対して向けられるのは、誤解の仕様のないくらいに真っ直ぐな、敵意という感情。 正論というものは、どうも万人への受けは良くないようです。 わたしは、肩をすくめながら言葉を重ねます。 ――なぜ、波風を立てる必要があるのですか？ わたしの言葉に呼応するかのように、少女の視線はますます鋭くなっていくようでした。 わたしの抱いたことのない、猛々しい敵意。 羨ましい限りです。 真っ直ぐに、ひとつの考えを正しいと断じることのできる、純粋さを保つことの出来た彼女の環境が、とてつもなく羨ましい。 ですから、これは嫉妬です。 彼女の怒りを逆撫でしてしまう余計な一言は、わたしの醜い心の現れ。 ――ご自身が正しいと思うのであれば、背中の大剣を振り回してみせますか？ 少女の纏う空気が、刹那の間に変わったような気がしました。 対話を諦めた、という表現が適切なのかもしれません。 少女の手にした、相手を叩き潰すための武器が、わたしに襲いかかります。 運命は一瞬でした。 武術をかけらも嗜んだことのない一般市民たるわたしが理解できたことは、結果だけ。 少女は身体をくの字に折り曲げ、立っていられずに膝から崩れ落ちてしまいました。 激痛に腹を抱えてうつ伏せになったところで、こめかみにもう一撃をくらっています。 ぼんやり者のわたしは、遅れて『お友だち』の聖騎士様に突き飛ばされ、尻餅をついている自分を発見します。 ――また、厄介ことが増えてしまいましたね。 息ができないのでしょう。 口を開いて喘ぐ少女は、まさに陸で溺れているかのようで、少しばかりかわいそうにも思いました。 わたしは、埃を払いながら立ち上がると、敵意をないように努めて笑みを浮かべながら、少女に近づきます。 少女は、目を大きく見開いて、何かを言いたげに口をぱくぱくとなさいます。 構わずに少女の側でしゃがみ込むと、少しでも痛みを和らげてあげようと、ゆっくりと髪を撫でてあげました。 この少女とは長い付き合いになりそうです。 じっくりと、わたしたちの考える『いじめ』について、理解を深めて行きたいと思います。 まあ。 この少女にとって、それが良い時間になるかどうかは、まったく自信はないのですけれど。