98万円で温泉の出る築75年の家を買ったDEEP
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はじめに 98万円で温泉が出るボロ屋を買いました。家を買った! ボロ屋を買ったぞ! ついにやってやった。やっちゃいました。俺はやった!! 二年のリサーチのはてにがっちり待ち構えて購入したので、むろん勢いとか魔が差したとかではない。 時はさかのぼり、あれはそう、コロナ禍のころです。四十数年生きてきた作家のババアも、こんなのSFの中でしか知らないよ……ってなるしかなかったロックダウン。恐ろしく張り詰めた空気がただよっていましたよね。 人はどんどん○くなるし、街はみるみる廃墟になるし、もうわたしたちどうなっちゃうのかわからない。そんな中なにもかも開き直ったもうすぐ子育ても終わるアラフィーがなにをしたかというと、 明日死ぬかも知れないんだから、好きなことをしよう。 ってこと。 いやまじで人間それくらい開き直ってる方が楽かもしれない。何を隠そう私のキャリアのしょぱなは阪神大震災で、当日バイトの面接にいくはずだったビルが倒壊してるのをテレビで見たとき、あ、もういろいろ考えるのやーめぴ、ってなったものです(そしてひたすらFF7をやり続けた)(無論親戚に水なども届けには行った) あのころの神戸にいたひとはみんなそうだと思うけど、神戸西部から地下鉄は板宿までしか電車が通ってなくて、問答無用でそこでおろされて、次にバスが走ってる場所までいくためには無限の徒歩。だがぐっちゃぐちゃにビルや家が倒壊しているので道はなく、百メートル歩いただけで靴底にガラスの破片がつきささり、歩いている人は崩れたケミカルシューズの工場からこぼれ出た自分の履けるサイズの靴を拾って歩き、そのへんには「○○へ、××公民館にいます。家族みな無事」みたいな手書きの看板が無数に立ってる地獄みたいな状況を見ると、あらゆることがどうでもよくなってくるわけですよ。 人間、死ぬときは死ぬ。 そこへこのコロナですよ。 は? 震災氷河期だけでもしんどいのに、やっと子育ても落ち着いてきた更年期のおばはんの人生に追い打ちをかけるようなこの状況。地球ふざけてんのか??? やめだやめだもうしんどいのは。 どうせ死ぬなら俺はやる。 98万円のボロがなんだ。温泉だ!!温泉!!それから海だ!! コロナとか知るか。ババアはもう好きにやらせてもらう!! 前作「98万円で温泉が出る築75年の家を買った」は、予想を遙かに超えたたくさんの方々にご購入いただきました。発売三ヶ月で累計三五〇〇部になり、同人誌としてはなかなかの数字がそろったのではないかなと思っています。 こちらは発刊当初から、ぜひDIY編が読みたい、とか、もっと続きが読みたい、現地で実際暮らしてみてどうなの? 思っても見なかったトラブルとかあるんじゃない?などなど、たくさんリクエストやご質問をいただきました。 そうね……、いやほんとに、買ってからもいろいろある。 十月に購入して、十一月からリフォームに入り、だいたい年明けごろ、床ができたあたりから少しずつDIYをして。ペンキで塗装したり、モルタル塗ったりタイルの目地を入れ直したり天井塗ったり家具をリフォームしたり。 ぶっちゃけ金さえかければリフォームなんてちょろいもんですわ。なんだってプロにやってもらったほうがいいに決まってる。プロはプロですよ、仕上がりが抜群に違う。実際、うちに一ヶ月泊まって即同じマンションの百平米を買ったお友達は、豪快に中身をぶっ壊し気持ちが良いくらいにスケルトンにして、今度は内装をデザイナーさんに任せて理想のワーケーション別荘をつくるんですって。うちの十倍くらいかかるんじゃないかな……、これぞ東京貴族の力。 次にうちの家を借りてくれたのは、札幌在住のキャリアママで、彼女なんかうちに泊まる前からさっさとうちのマンションで売りに出てる部屋の内見予約をして、結局私が勧めたフルリノベーション済みの部屋を即決で買い増した。えっ、はやすぎん?? あまりにも早い。コンビニにからあげクン買いにいって季節限定の高いやつ即買うついでにレジ横のおやつ買うみたいな決断の早さ。まったく悩まん。 いやでも仕事ができるひとに共通するのは、決断力の早さだっていうのはよく言われていること。札幌キャリアママなんてそもそも私の知り合いでも、友人の友人でもない、なんと「98万円温泉本」を読んで、「四人の子供を育ててやっと育児が終わるのでゆっくりしたい。部屋を貸してください!」と凸メールをくれた人。 仕事ができる人は営業の大事さをよくわかっている。だめもと精神とアクティブさと決断力があるんだよね。そして断られてもそれを恥ずかしいとか失敗だとか思わない。よくめんどくさい上司のトリセツに「恥をかかせない」とかあるけど、そんな配慮をしなきゃいけない時点でそいつのレベルがわかってしまうというものです。せちがらす。 本当に仕事ができて、会社にとって価値のある人は、多少の失礼より積極性をかってくれるものだし、とくに恥ずかしいこともない。なぜなら、自分に絶対的な自信があるから。 人との出会いは多くの学びを得る。そうか、成功者には恥ずかしいことなんてないのかー。そらそうか。 まあでもなるほど、私が二年かけて丹念にリサーチをしてきた知の高速道路(Byうちの温泉マンションを即買った人)を手に入れた人間は、そこからさらに時間をカットするために私のお客になることにした。だって、そしたら私はどうする? 聞かれた質問にひとつひとつ丁寧に答えるしかない。だってお客さんだもん。そして、わたしのボロ屋に住みたい、私も温泉が、海が、魚介が好きって言ってくれる同士だもん。愛するしかないでしょ。愛! わたくし、そりゃあ必死で二人のために部屋を探しましたとも。いま売れ残ってる部屋にひっかかりそうになるたび、なぜそこが売れていないのか、いつから売れていないのか、そしてこの三年くらいの部屋の流動性や共用部のメンテナンスなどなどの情報を横流し。 私は不動産屋じゃないし、とくにマンションが売れたからといってメリットはない。いい人たちが近所になってあーだこーだ言い合ったり、この温泉ハウスで近所飲み会ができることくらいかな? でも、だからこそ大事なんだね。ビジネスじゃない人からの情報ってなかなか得がたいから。 そんな彼女たちに質問されたことは、たぶん「私も温泉ハウス欲しいわー」って人もきっと気になるポイントだろう。さらに買ったはいいものの、どういうリフォームにどれだけお金がかかるかとか、どこは我慢して、どこはマストだとか、維持費はどれくらいかかるのかとか、生活に困ったことはないかとか、住んでみないとわからないことも多いから。 ってことはまた??? また同人誌を出さねばならないってこと??? 結構悩みました。プライベートなこともにかかわってくるし、なにを書くにしてもほかの住人さんたちにご迷惑にならないように配慮しなきゃいけないし。 だけど……、だけど、これだけは言えるんだ。 温泉は、いいぞ!!!!!!!!!! たとえば天気が悪いとせっかくのマウンテンビューもオーシャンビューもだいなしになってしまうし、魚屋にいくのもおっくうになる。 しかし我が家はなんといっても温泉が出る。 芒硝泉って知ってますか? 温泉旅館が声を大にして宣伝するラジウム泉の一種です。そう、泉質が自慢の温泉旅館のお湯がうちの部屋に出る。蛇口をひねれば出るんだよ。信じられない。 冬、下界がびゅうびゅうに吹雪いていても、大雨や台風でせっかくのお休みに外出できなくても、「十時にチェックアウトしてください」なんて言われなくてもいい。好きな時間まで温泉に入って、すきなだけおふとんの上でごろごろしててもいい。 それがどれだけ幸せなことか、一泊二日の旅行にいったことあるひとならわかるんじゃないかな。 どんなに仕事が進まない日でも、いやなことがあった翌日でも、体調が悪くてどんよりしてしまうときも、 「ま、うちには温泉があるし」 と謎の切り替えができてしまうすばらしさよ。まさにプライスレス。 この本は、前作「98万円で温泉の出る築75年の家を買った」の続編です。 前作が家のリサーチ、購入レクチャー本なら、今作はその後、買った家のメンテナンス、DIYやリフォームにかかった費用、ランニングコスト、周囲とのおつきあい、建物自体の管理状態や実際の生活、起こったトラブルなど、二拠点に興味があるけどボロ屋は怖いあなたのために、わりとざっくばらんに書いています。 あくまで私の場合はこう、なので、かならずしも読んでくださったあなたにシンデレラフィットする物件じゃないかもしれない。あなたには山の別荘地のほうがあっているかもしれない。 それならそれでいいんです。そういうことも含めて、いつものように私の突撃人生を笑って読んでいただけたら幸いです。