備前国「石上布都魂神社」の神社史
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備前国「石上布都魂神社」の神社史 —『先代旧事本紀』系譜と奈良・石上神宮の比較を通じて— 序論 1. 研究課題の設定 日本古代において、王権と氏族の関係を解明するうえで不可欠な存在が「物部氏」である。物部氏は天孫降臨神話において饒速日命(ニギハヤヒ)の後裔とされ、武器の管理・鎮魂祭の執行・軍事的役割を担った氏族であり、同時に天皇家と密接に関わりながら王権祭祀の一翼を担った。彼らの氏神を祀る場所として大和国山辺郡の石上神宮が知られるが、備前国赤坂郡にも同じく「石上布都魂神社」が鎮座していることは、古代祭祀史における注目すべき二重性を示している。 本稿の研究課題は、この「石上布都魂神社」の神社史を詳細に再構成し、その起源・変遷・由緒を明らかにすることである。特に、奈良の石上神宮との関係を軸に比較を行い、両者がいかに異同をもちつつ共通の布都御魂剣伝承を継承したのかを検討する。そして、その過程で『先代旧事本紀』(以下、旧事紀)に記される饒速日命系譜と物部氏の系譜的自意識を重視し、備前社が自らを「物部後裔の社」として位置づけたことを考察する。
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