【2026.1.25新刊】あなたと、いつまでも、どこまでも
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【2026.1.25新刊】『あなたと、いつまでも、どこまでも』 文庫判/246p/全年齢 んしょさに/んじさに/らごさに/小夜さに/さぶさに/小豆さに/般若さに/うぐさに/ごけさに/大さになどなど… 刀さに短編集、すべての話は繋がっておりません。pixiv再録+未再録35000字ほど入っています。 以下サンプルはへしさにです↓ ─────────────────────────── 「ねえ、いつか、世界の終わりが来たら」 その時はアイスを山ほど食べようね、と、私は言った。 アイスを山ほど食べて、ポテチも食べて、あと光忠のハンバーグと、歌仙のかぼちゃの煮物と、北谷菜切のソーキそばも食べて、次郎秘蔵のお酒なんか飲んじゃって、みんなで歌って踊って、 「それで、笑ってばいばいしようね」 長谷部はなんだか泣きそうな顔で私を見た。私はそれに気付かないふりをして、「長谷部は何食べたい?」と笑った。 「……主の、ミートソーススパゲティが、食べたいです」 「いいよ」 ね。約束。 そうして、私たちは指切りげんまんをした。つまらない、どこかの審神者と刀の、日常のワンシーン。 そして、月日は経って。世界の終わりはやってきた。 それはあっさりとしたものだった。最前線部隊が敵陣本拠地の急襲に成功、本作戦を以てこの戦争の終結を宣言する──。 「え」 終わりってこと? と私は長谷部に訊いた。長谷部は歯を食いしばって、それでも「はい」と頷いた。 その晩は宴に決まった。 買い出しだけでもものすごい手間なので、私たちはまず総出で万屋に行った。同じ考えの本丸がずいぶんあるようで、万屋街はかなりの人出だった。 私たちはバケツアイスを買い、カラースプレーチョコを買い、ひき肉を買ってかぼちゃを買った。そうしてトマト缶を手に取った時、はじめて実感が胸に迫ってきた。 終わりなんだ。 「ねえ長谷部」 帰り道、皆でどやどやと道を歩きながら、私は長谷部を呼んだ。 「長谷部ってば」 「……はい」 長谷部は悲壮な顔をしていた。 「何でしょう」 私はその背中をばしばし叩く。もう思いっきり、ばっしばっしと。 ね、長谷部、 「約束したじゃん」 私は、ミートソーススパゲティを作る。長谷部は、笑ってばいばいする。 「今夜、楽しみだね」 「……はい」 長谷部の声は、早くも湿っている。 厨は戦場になった。料理の得意な者は皆破れかぶれの明るさで腕をふるい、大広間には絶対に食べきれないであろう量の料理がどんどん運ばれた。私はそれを大笑いしながら手伝って、合間に抱きしめたり抱きしめられたり、泣いたり泣かれたり、した。皆がこんな平凡な審神者をここまで慕ってくれていることが、ありがたくて嬉しかった。 いただきます、の声は、かつてないほどぴったり揃った。 食べ、飲み、歌い、踊り、私たちは思いきり陽気に騒いだ。 「ね、ミートソーススパゲティ、おいしい?」 長谷部は黙って頷く。私はそのコップに日本酒をどぼどぼと注ぐ。 「飲まなきゃ」 食べて、飲んで、歌って、踊って。 「最後なんだからさ」 ぐ、と腕を引かれた。長谷部が掴んでいるのだった。そのまま立ち上がって廊下に出ようとするので、私はほとんど引きずられるようにして立ち上がる。 ひゅーっと誰かの指笛が飛ぶ。やんややんやの大騒ぎが背中を押す。私はまだ長谷部に引きずられながら廊下を進む。 「ちょっと、どうしたの」 長谷部は答えない。そうして、大広間のどんちゃん騒ぎも遠くなった廊下の端で、長谷部はようやく立ち止まった。 「あるじ」 長谷部は泣いていた。

