一軸送り機構で学ぶ 数理モデリングと制御 第3巻 実機要素と実装編
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一軸送り機構で学ぶ 数理モデリングと制御 第3巻 実機要素と実装編 摩擦・飽和・外乱補償・離散実装・同定・重力補償 総ページ数:227p
【本書について】
本書は、一軸送り機構を題材として、理想化された線形モデルから実機要素を含む問題へ進むための技術同人誌です。第1巻では、剛結合1自由度モデルを扱いました。第2巻では、弾性結合を含む2自由度モデルを扱い、共振、反共振、センサ位置、ノッチフィルタを整理しました。本巻では、その上に摩擦、バックラッシ、入力飽和、不感帯、外乱、離散時間実装、パラメータ同定、鉛直軸と重力補償を重ねていきます。
【理想モデルから実機要素へ】
制御工学では、まず見通しのよい線形モデルから出発することが多くあります。質量、粘性、剛性を持つモデルを立て、状態空間表現や伝達関数へ変換し、PID制御、状態フィードバック、ノッチフィルタなどを設計する。この流れは、機械制御を理解するうえで重要です。しかし、実際の一軸送り機構は、線形モデルだけでは済みません。
【実機で何がずれるのか】
低速送りでは摩擦が支配的になることがあります。反転動作ではバックラッシや不感帯が効くことがあります。モータやアンプには入力飽和があり、積分器を持つ制御系ではワインドアップが問題になります。センサには分解能やノイズがあり、制御器は連続時間ではなくサンプリングされた離散時間系として実装されます。さらに、モデル中の質量、慣性、剛性、粘性係数、摩擦係数は、任意に設定できる記号ではなく、実験や測定から推定すべき量です。
【第3巻で扱う問題】
第3巻では、実機で現れやすい非線形性、制約、外乱、実装上の誤差を扱います。モデルを複雑にすること自体を目的にするのではなく、まず第1巻・第2巻で作った理想モデルを基準にして、そこから何がずれるのかを確認します。摩擦、飽和、離散化、同定誤差、重力項を、必要な範囲で段階的に追加していく構成です。
【摩擦を扱う】
実機の送り軸では、摩擦は避けて通れません。粘性摩擦だけで近似できる領域もあれば、クーロン摩擦、静止摩擦、Stribeck効果、スティックスリップのような非線形性が支配的になる領域もあります。特に、低速送り、微小位置決め、反転動作、停止保持では、摩擦が応答の見え方を大きく変えます。本巻では、制御設計で使える程度の摩擦モデルとして、これらを段階的に整理します。
【飽和と不感帯を扱う】
連続時間の線形モデルでは、制御入力は自由に大きくできるように見えます。しかし、実際のモータやアンプには、最大電流、最大トルク、最大速度があります。入力飽和を無視してゲインを大きくすると、シミュレーションでは鋭い応答に見えても、実機では応答が遅れたり、振動が増えたりすることがあります。また、不感帯やバックラッシは、線形制御では説明しにくい位置決め誤差や反転時の遅れを生みます。
【外乱オブザーバを扱う】
送り軸では、摩擦、切削力、負荷変動、モデル誤差などが外乱として現れます。これらをすべて詳細にモデル化することは難しい場合があります。そこで、モデルで説明できない入力相当の成分を等価外乱として推定し、補償する考え方が有効になります。本巻では、外乱オブザーバの基本構造、Qフィルタの役割、モデル誤差やノイズとの関係を整理します。
【離散時間実装を扱う】
実際の制御器は、連続時間ではなくサンプリング周期を持つ離散時間系として動作します。連続時間では安定に見える制御系であっても、サンプリング周期、計算遅れ、速度推定、フィルタ、エンコーダ分解能によって、実装後の応答は大きく変わることがあります。本巻では、連続時間モデルの離散化、離散PID、速度推定、ローパスフィルタ、実装ループの処理順序を扱います。
【パラメータ同定を扱う】
モデル中の質量、粘性摩擦係数、クーロン摩擦、剛性、減衰は、実機では既知とは限りません。これらの値は、実測データから推定し、モデルと実測の差を確認する必要があります。本巻では、線形最小二乗法、等価質量と粘性摩擦係数の推定、クーロン摩擦を含む推定、共振周波数からの剛性見積もり、同定実験の設計、残差解析の見方を扱います。
【鉛直軸と重力補償を扱う】
水平軸では無視できた重力ポテンシャルは、鉛直軸では本質的な役割を持ちます。静止しているだけでも重力を支える入力が必要であり、サーボOFF時の落下、保持ブレーキ、カウンタバランス、ボールねじの逆駆動性、保持トルクなど、安全設計に直結する問題が現れます。本巻では、鉛直送り軸の等価質量、保持トルク、重力補償、補償誤差、荷重変動、ブレーキ、逆駆動性を整理します。
【発展としてエネルギーの見方へ進む】
本巻の最後では、発展的な話題としてハミルトン形式を扱います。1自由度モデルや2自由度弾性モデルを、エネルギー、運動量、入力パワー、散逸の観点から見直します。PID制御、外乱オブザーバ、ノッチフィルタ、重力補償を、単なる制御器の式としてではなく、機械系へエネルギーを与え、散逸させ、整形する操作として眺め直します。
【各章の構成】
【第14章 摩擦モデル】 送り軸における摩擦の位置づけを確認し、粘性摩擦、クーロン摩擦、静止摩擦、Stribeck効果、スティックスリップを扱います。摩擦を運動方程式へ組み込む方法、PID制御との関係、摩擦補償の考え方、実用上の確認手順を整理します。 【第15章 バックラッシ・入力飽和・不感帯】 バックラッシ、入力飽和、不感帯を、入出力非線形として扱います。入力飽和とPID制御、アンチワインドアップ、バックラッシによる制御系の見え方、実機での切り分け、非線形要素の診断、リミット処理の設計原則を確認します。 【第16章 外乱オブザーバ】 摩擦、切削力、負荷変動、モデル誤差などを等価外乱として捉え、外乱オブザーバによって推定・補償する考え方を扱います。ノミナルモデル、外乱推定、Qフィルタ、外乱補償入力、摩擦補償としての見方、モデル誤差とロバスト性、実装上の注意を整理します。 【第17章 離散時間制御と実装】 連続時間モデルを離散時間で実装するための考え方を扱います。サンプリング、ゼロ次ホールド、連続時間モデルの離散化、離散PID、サンプリング周期と遅れ、速度推定とノイズ、実装ループの処理順序、単位・符号・時刻の検査を確認します。 【第18章 パラメータ同定】 実測データからモデルパラメータを推定する方法を扱います。線形最小二乗法、等価質量と粘性摩擦係数の推定、クーロン摩擦を含む推定、共振周波数からの剛性見積もり、同定実験の設計、同定結果の検証、推定値の不確かさ、残差解析を整理します。 【第19章 鉛直送り軸と重力補償】 水平軸と鉛直軸の違いを確認し、鉛直方向に動く送り軸のモデル化と制御を扱います。等価質量、保持トルク、重力補償、積分器だけに頼る場合の問題、重力補償誤差、荷重変動、サーボOFFとブレーキ、逆駆動性、安全側の設計を整理します。 【第20章 統合設計フロー:モデル化から実装まで】 要求仕様から、モデル化、同定、制御器設計、シミュレーション、実装、実機試験までの流れを整理します。モデル粒度の選び方、同定と検証の組み込み、制御器と補償要素の組み合わせ、実装時のチェックリスト、実機試験の進め方、トラブルシュート、設計レビューを扱います。 【第21章 発展:ハミルトン形式で見る制御とエネルギー】 1自由度モデルや2自由度弾性モデルを、ハミルトン形式によって見直します。入力パワー、受動性、PD制御のエネルギー整形としての見方、2自由度系のエネルギー収支、状態空間表現との関係、PID・外乱オブザーバ・ノッチフィルタの見方、鉛直軸と重力ポテンシャルを扱います。 【付録と解答例】 付録には、第3巻で用いる記号一覧と単位系、離散時間実装の補足、Pythonシミュレーションを収録しています。また、各章の章末問題に対する解答例も収録しています。本文を読むだけでなく、問題と解答例を往復することで、実機要素を含むモデル化、制御器設計、実装上の判断を確認できる構成にしています。
【想定読者】
本書は、第1巻・第2巻で扱った理想化モデルをもとに、実機に近い問題へ進みたい方を想定しています。制御工学、機械力学、メカトロニクス、ロボット工学、工作機械、精密位置決めに関心がある方、摩擦、飽和、外乱、離散化、同定、重力補償を具体的な機械モデルから理解したい方に向いています。また、3Dプリンタ、CNC装置、リニアアクチュエータ、送り軸制御に関心がある方にも向いています。
【前提知識】
第1巻で扱う剛結合1自由度モデル、状態空間表現、PID制御、および第2巻で扱う弾性結合2自由度モデル、共振、反共振、ノッチフィルタに触れていると読みやすい内容です。また、微分方程式、行列計算、ラプラス変換、基本的な力学、制御工学の初歩に触れた経験があると理解しやすくなります。ただし、必要な事項については本文中でも補足しています。
【商品形式】
電子版には、PDF版とEPUB版を同梱しています。PDF版は、数式、図表、ページ構成を確認しながら読む用途に適しています。数式や図を正確に追いたい場合は、PDF版での閲覧を推奨します。EPUB版は、スマートフォン、タブレット、電子書籍リーダーなどで補助的に読むための形式です。閲覧環境によって、数式や図表の表示がPDF版と異なる場合があります。
【本書の位置づけ】
本書は、全3巻構成の第3巻です。第1巻では、剛結合1自由度モデル、等価慣性、状態空間表現、状態フィードバック、PID制御を扱います。第2巻では、弾性結合2自由度モデル、共振、反共振、状態フィードバック、PID制御の限界、二重センサフィードバック、ノッチフィルタを扱います。第3巻では、摩擦、バックラッシ、入力飽和、不感帯、外乱オブザーバ、離散時間実装、パラメータ同定、鉛直軸と重力補償を扱います。第1巻と第2巻で作った理想モデルを基準として、実機で現れるずれを段階的に整理する巻です。
【注意事項】
本書で扱うモデル、数式、数値例、プログラムは、教育目的の簡略モデルです。特定メーカーの設計指針や、実機設計の安全性、性能、信頼性を保証するものではありません。実機への適用にあたっては、対象装置の仕様、安全規格、機械的保護機構、リミットスイッチ、非常停止系、ブレーキ、フェイルセーフ設計などを別途確認してください。
【受注生産の物理本について】
本書は、電子版に加えて、受注生産形式の物理本も用意しています。物理本は、紙の本として手元に置き、数式や図表を参照しながら読み進めたい方向けの形式です。受注生産のため、ご注文から発送までに時間がかかる場合があります。物理本の仕様、発送時期、電子版の付属有無については、商品バリエーションの記載をご確認ください。
















