きっと、いつか【オズ マンフー】
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2020年3月21日発行。54頁。 マンボイ×フーカの小説です。vita版に沿った内容で、娼館ルートのvita版追加エピソードの翌週の日曜日から、フーカがサロンに通わなくなったらというIF小説です。オフのマンボイ、つまりサ〇〇〇〇が登場します。
本文サンプル
プロローグ ・ ・ ・ 『流星群祭』 それは、全ファミリー合同主催の、一年で一番大きな祭りである。夜空は流星で埋め尽くされ、その日、流れ星に願いを託すと、叶うという伝承がある。街に住む人々は、家の灯りが外に漏れないように、家のカーテンを厚手のものに変えたりランタンを買ったりと、祭りが近づくと準備で大忙しになる。 フーカが世話になっているオズファミリーのカラミアたちも祭りの準備で忙しそうだが、フーカは手伝えることもないため、祭りの準備をただ眺めているだけしかできなかった。 流星群祭の当日のカラミアたちは、祭りの警備で多忙を極めているため、フーカは初めての流星群祭を、独りで過ごさねばならなくなった。 (もしかしたら、初めてじゃないかもしれないけれど…) もしかすると、記憶をなくす前にも、流星群祭に参加していたのかもしれない。その場合、誰と祭りの時間を過ごしていたのだろうかと、考えても答えの出ないことをフーカはぼんやりと考える。 ・ ・ ・ 「あ、ありがとうございま……」 男性に礼を言おうと左に顔を向けたフーカの顔は、一瞬にしてこわばる。 「マ、マンボイさん!」 思わず大声を出してしまったが、超満員の酒場の喧騒の中で、フーカの声に耳を止めるものはひとりもいなかった。 左隣に座っているのは一か月前のあの日以来、会っていなかった褐色の肌を持つ男性その人だった。 「マンボイさん!……お、お久しぶりです。こんなところで会えるだなんて!」 驚きを隠せないフーカの表情に動じることなく、男性は静かに左手に持っていたビールグラスをテーブルに置き、一呼吸おいてから声を発した。 「人違いではありませんか?オレはマンボイという名前ではありません」 「え……」 突き放されたような言い方に、フーカは戸惑った。確かに顔も声もマンボイそっくりだが、男性は片眼鏡をかけておらず、服もフーカがよく知っているサロンの従業員の制服ではなく、手袋もつけておらず、白いシャツを第二ボタンまで外し、ネクタイもせず、ズボンをはいただけの軽装の出で立ちであった。 「ごめんなさい!あまりにもそっくりだったもので……」 本当によく似ているが、人の顔をじろじろと見るのも失礼なので、フーカはカウンターの正面に向き直り、テーブルに視線を落とす。 (以下略)