Romance――龍村兄妹物語
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目次 あたしのお兄ちゃん それを何と呼ぶかは貴女が決めてくれ たとえばそれをあなたが何と呼ぼうとも 俺の妹は小説を書いている 作中言及のある作家はプルースト、ヴァレリー、ヴェルレーヌとランボー、ジャン・ジュネ、テオフィル・ゴーチェ、ウンベルト・エーコ先生にダンテ様☆ そして内容はというと、兄とその友人を自作BL小説のネタにする妹のおはなしから始まります♪ 「それを何と呼ぶかは貴女が決めてくれ」冒頭 世の中に、「妹萌え」ということばが流行りだしたのはいつの頃だろうか。その前はたしか、「シスコン」といったはずだ。 しかしながら厳密にいえば両者に多大なる差異があるかもしれず、俺は無茶なことを言い出しているのかもしれない。だいたいサブカルチャーに疎いので「萌え」の意味がよくわからない。だからというわけでもないが、そのふたつに違いを認め難いというだけのはなしである。とはいえシスコンの語には「姉」も含まれることくらい瞬時に気づくべきだ。 俺はそうとう疲れている。ああ、疲れているのだ。 こんなことでグダグダ悩むくらいなら、プルーストでも読むほうがいい。フランス語を忘れないためにも原書で読むかと考えていたところで電話が鳴った。 「龍村さん、泊めてくださいよ」 浅倉(あさくら)悟(さと)志(し)だ。同い年の後輩は学生時代と変わらず俺の家を急場の避難所だと思っているようだ。断ったとて、来ることは間違いない。駅前角のコンビで明朝食べるものを適当に買ってこいと命令して電話を切った。 浅倉のやつ、相当まいってるな。 自分のことで頭を悩ますより、他人のそれのほうが気も楽だ。フランス語をあきらめ集英社版をローテーブルに置き、母が好きだったウラジミール・ド・パハマンの弾くリストの『リゴレット・パラフレーズ』を流す。リストは、ほかの作曲家のパラフレーズにおいて驚嘆すべき手際を発揮する。その甘美すぎるほどの旋律に身をゆだねながら、やつが来るまでこの懊悩の正体を見極めるために頭をきりかえた。 ことの始まりは浅倉が深町さんと再会した「奇跡」による。それは、俺と妹の茉莉(まり)の関係に奇妙な変化をもたらした。妹とはいっても、俺の家は連れ子同士の再婚家庭なのだが。