2019年8月刊/A6版/20P 田沼と夏目のほのぼの日常ストーリー。
朝露
「あら貴志くん、こんなに早くからお出掛け?」 夏休みに入ったばかりのその日、いそいそと出かける支度をして、階段を下りていくと、すぐに塔子に見つかってしまった。 「お…おはようございます」 「おはよう…ラジオ体操とか?」 「いえ…」 「じゃあ、太極拳…」 朝と言えば運動…そんなイメージが塔子の中にはあるのだろうか…今一つ的を得ない会話が続く。 「じゃあ~」 「えーっと塔子さん? 俺、田沼の手伝いにお寺まで…」 塔子の想像していた朝からの行動…とはだいぶかけ離れた答えが返ってきた。 「田沼くんのお手伝い?」 「夏の間は、田沼も朝から寺の清掃とか境内の掃除とか手伝ってるって聞いたから、俺も朝ごはん前に、手伝おうかな…って昨日約束したんです」 昨日、みんなで集まって例によって釣りをしていた時に、朝寝坊の話を西村がしていて、田沼だけが朝早い時間に起きるって聞いて、理由を聞いたらそう話してくれた。 普段も手伝える時は手伝うけれど、なかなか難しいときもあるから、寺の住職でもある田沼の父は、無理しなくていいと言ってくれているらしいので、せめて夏休みとか冬休みとか、長期の休みだけは手伝うようにしていると。 そんな話を聞いたら、夏目も何か手伝いたくなったのだ。 例によって、ニャンコ先生にはアホだのバカだの言われたのではあったが…。 「あらあら、偉いのねぇー、田沼くんも貴志くんも、じゃあ、帰ってくる頃には美味しいご飯作って待っているから、頑張って手伝ってきなさい!」 「はいっ!」 「そうそう、たまには田沼くんも誘って帰ってらっしゃい」 塔子の暖かな声に見送られながら、夏目は田沼の家へと向かったのだった
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