月の裏側
- ¥ 850
再販分の余部です。よろしくお願いします! スマートレターにて発送 『月の裏側』新刊 文庫サイズ/P128/850円 表紙 マットポスト 本文用紙 ソリストSP(ピンククリーム) ⭐️ねんどろいど、もちマスは付きません。 2022年8月11日(木・祝) pictSQUAREで開催予定のんばみかWEBオンリー「日進月歩2」にて頒布しました。 https://pictsquare.net/1xxg7lq6p1q141tcfaw3se51kkz2e5p6 サンプル(pixiv) https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18012579 表紙デザイン ネズ様(@_nzworks_) 本文テンプレート アカツキユウ様(@akatsuki_yu) 舞台刀剣乱舞のジョ伝〜悲伝まで。ストーリーのネタバレが大いにあります。 ステ本丸の山姥切国広と三日月宗近が過ごしたかけがえのない日々のお話。視点は山姥切寄り。 山姥切の中で三日月の存在が何故あそこまで膨れ上がったのか、自分なりの解釈をオリジナルストーリーで書き起こしました。 発表済み作品の『月の裏側』『存在証明』『月、遠し』を大幅に加筆修正し、一本のストーリーで繋げました。 サンプルには載ってないところですが、遡行軍の山姥切が出てきます。こんな遡行軍まんばもいるかもなーと楽しんで頂けたら幸いです。
以下、本文より抜粋
【 しばらく頑張っていた三日月だが、集中が切れてきたのか、ときどき手を休めるようになった。仕様のない刀だ。話好きな刀だし、なにか雑談でもしてやればまたやる気になるかもしれない。山姥切は話題を考えた。しかし、山姥切は会話が得意ではない。そもそも自分は何故、三日月の仕事を手伝っているのか。そうだ。三日月のせいだ。三日月が俺を呼んだのだ。帳簿付けを手伝ってくれと。こいつはわざわざ名指しで呼んだのだ。 「何故、俺に聞いたんだ。長谷部や鶴丸に聞いてもよかったんじゃないか」 ぽつりと、疑問を投げかけた。長谷部に聞いた方がきっちり教えてくれるだろうし、鶴丸に聞いた方が楽しいだろう。三日月は、間伸びした声でんー、と首を傾げた。ぼんやりと宙に向けていた視線を山姥切の顔にずらした三日月は、目尻を緩め、なんてことないように言った。 「山姥切がいいんだ」】P33〜34 【 三日月は以前、山姥切のことを「煤けた太陽」と評したことがある。 月を照らす陽の光のようにこの本丸を照らしてやれ。月が美しい夜、三日月はそう言った。しかし、山姥切の今の心境から言わせれば、三日月の方が陽の光のように見える。決してじりじりと肌を焦がすような眩しい太陽ではない。三日月の放つ光は、森に降り注ぐ木漏れ日のように朧げで神聖だ。】P39 【 思考の渦がブツンと途切れた。少しして、大声で名を呼ばれたのだと気づく。三日月は、真剣な表情で山姥切を見つめ、強くて美しい瞳で言った。まだ焦る時ではない。じっくりと耕し、種を植え、実りの時を待つのだ。 三日月を見つめ返す。しっかりと、冷静に、両の目で見た。それは、得体の知れないなにかではなかった。山姥切の行く末を心の底から案ずる、お節介な年長者の顔だった。】P46 【 手のひらのどんぐりを見せようと手を開くと、三日月は何の前触れもなく山姥切に近づき、しっかと抱きしめてきた。 それは一瞬の出来事だった。三日月はすぐに山姥切から離れると手甲を外し、川に浸かった山姥切の手を摩った。山姥切の手のひらに乗っているのは、間違いなくどんぐりだった。結局少し濡らしてしまい、水からは守れなかったが、三日月の表情を窺うと心からの安堵が窺えた。 冷えて若干赤くなった手を摩ってくれる三日月の手は温かい。】P53〜54 【 退室しかけた清光の背を、山姥切は呼び止めた。 「三日月は誰のことだって褒めるだろ」 半身を捻って振り向いた清光は、一瞬目を丸くし、すぐに乾いた笑いをした。 「しょっちゅう褒められてるのは国広くらいだよ」 「あいつはわざと皆の前で褒めるから、そう見えるだけだ。あいつは俺の反応を見て面白がっている。とんだくそじじいだ」 山姥切が捲したてると、清光はしばらくぽかんとしていたが、やがてがっくりと肩を落とした。 「……うわ、にっぶ」】P63