【GKジノタツ】amazing world
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GIANTKILLING ETUオールキャラ ジノタツ/ルイジ吉田×達海猛 全年齢 A5/24P/コピ本/330円 ETUに監督として招聘された達海が選手達の勝ちたいという気持ちに火をつけたキャンプのころのジーノと達海。 二人はすでにセックスをしていますが、ETUオールキャラを書くのに忙しくて結果全年齢になりました。リリカル全年齢。
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前半戦最後の東京ダービーを終え、イーストトーキョーユナイテッドは現在9位。中断期間に入った。 昨年は監督を交代させたチームが多かった。 実績のある監督が契約を解除されると、順位に満足していないフロントが現在の監督を解任してでも実績のある監督を招聘しようと連鎖反応が起きるものだが、それにしても監督を交代させたチームが多かった。 イーストトーキョーユナイテッドでも、かろうじて残留は果たしたものの成績不振の責任を取って監督が退任した。 後任監督が決まらないまま年が明け、スポーツ新聞の順位予想でもイーストトーキョーユナイテッドまたも降格圏内かなどと扱き下ろされていたが、開幕間近になって全盛期に栄光の7番を背負っていた達海猛が監督に就任することが決まった。さらには優勝争いに絡める順位で前半戦を終了したことは、地元浅草のサポーターはもちろん実際にピッチを走る選手達をも驚かせていた。 雨の少なかった梅雨が明けてからというもの、太陽が照り付ける日が続いていた。台所事情の厳しいイーストトーキョーユナイテッドが冬季に引き続き夏季のキャンプを行う江東区夢の島競技場のピッチには、スプリンクラーで水が撒かれていた。 ロッカールームでトレーニングジャージに着替えたジーノは、蛍光灯に照らされた通路を歩きながらスパイクの靴先に体重を掛けた。履き慣れた白金のティエンポリゲラ。綺麗に磨き上げられたそれは、このキャンプでもディフェンスとディフェンスの間にできた狭い隙間の真ん中をメジャーで計ったように通り抜ける、悪魔のようなスルーパスを蹴らせてくれるに違いない。 「ようジーノ、集合時間に間に合うなんてめずらしいな。」 マッサージルームから出てきた堺がジーノに声を掛けた。トレーナーに軽く片手を上げると堺はジーノと並んで歩きはじめる。反対側の手にはミネラルウォーターのボトルを握っている。 「サック。」 「開幕前のキャンプなんて、随分遅れて来たじゃねえか。真面目に練習することにしたのか?」 「やだなあ、僕が真面目に練習してないみたいじゃない。」 「真面目に練習してるとは言えないだろ。」 「まあ、サックよりはいくらか不真面目かもしれないけど。」 集合時間に遅れなかったのは偶然だ。キャンプ初日の練習が午後開始だったからだ。午前中の遅い時間に起きて、昼食にスパゲティポモドーロを作って食べた。トマトの水煮をただ煮詰めるだけの、簡単なものだ。 「サックはマッサージかい。」 「ああ、股関節と腿裏の筋肉の張りが気になってな。」 「グロインペイン症候群は時間が掛かるよ。」 堺がジーノを見た。口の端を上げる。 グロインペイン症候群は骨盤周辺の筋肉の慢性疲労や過負荷による股関節の可動域低下などによって鼠径部周辺に運動痛や圧痛が出る疾患だ。特別な治療法は無い。グロインペイン症候群と診断されれば、休養と強烈な痛みを伴うマッサージで筋肉の過度の緊張をほぐしていくしかないのだ。 「サッカーやってれば避けて通れねえ。職業病だ。」 「練習なんかせずに、バカンスにでも出掛けたほうがいいんじゃないの。」 「練習を休むと余計に具合が悪くなるんだよ。」 「はは、サックらしいね。」 通路の突き当りにある夢の島競技場と大書きされたガラス扉を押し開けると、うわ、と小さな声を上げて堺が顔を顰めた。網膜に痛みを感じるような陽射しを片手を上げて遮る。 「暑いな。」 堺が忌々しそうに舌打ちするのを聞きながら、ジーノはピッチを見回した。選手達があちこちでかたまりになって話をしたりストレッチをしたりしている中、村越は自動販売機の脇のベンチに浅く腰掛け、スパイクの靴紐を結び直している。表情は硬い。 「東京でキャンプをやろうっていうのがそもそもの間違いだと思うんだけど。」 「しょうがねえだろ、うちは貧乏だからな。」 堺は体を屈めて靴紐を結んでいる村越をちらりと見ると、暑い暑いと大騒ぎしている黒田にうるせえぞと怒鳴り声を上げた。 世良が東京ヴィクトリーとの試合のことを話している。ああすればよかったこうすればよかったというやつだ。ロッカールームでもそのことを話している選手が何人もいた。 プレシーズンマッチに引き続き引き分けて勝ち点こそ取れたものの、試合内容としては完敗と言っていい試合だった。選手達の誰もが、大差がついて負けてもおかしくなかったということをわかっていた。 「引き分けた。負けなかった。ああいう試合ができるようになったってことだろ。」 堺は吐き捨てるようにそう言うと一口ミネラルウォーターのボトルを呷った。切り替えが早いのはいいことだ。まあそれでも勝ちたかったけどな、と堺はジーノを見て自嘲気に笑い、ミネラルウォーターのスクリューキャップを締めた。 「試合内容を引き摺るよりはいいんじゃないスか。」 赤崎の言葉に世良が髪の毛を逆立てる。 「他人事のように言うなよ、赤崎。お前も試合に出てたじゃん。」 「王子、おつかれさまッス。」 相変わらず元気そうだね、と椿に声を掛け、ジーノは入道雲の湧き上がる空を見上げた。それにしてもあまりの暑さに溜め息が出る。 「そんなことよりも日焼けが心配だよ、僕は。」 「もはやサッカー以前の問題だろ、それは。」 選手達から数分遅れてトレーニングポロを着た達海がガラス扉を開け出て来た。またここでキャンプするのかよー、などと悪態を吐きながら唇を尖らせている。 「そういえばジーノ、このあいだのオールスター戦調子悪かったんじゃねえか?」 達海の横顔に気を取られていたジーノは、驚きを顔に出さず堺を振り返った。 「…………僕はいつだって調子いいよ。調子が悪く見えるときは周りが僕に合わせられていないんだよ。」 「オールスターだからいつものようにはいかねえだろ。」 「アシストしかつかなかったのは残念だけど、ゴールは譲ったんだ。ハットトリックがかかっていたからね。」 「ポジションを下げていけば40手前まではなんとかやれるかもしれねえが、あのひとのあの嗅覚はすげえよなあ。」 「押し込むだけだったとはいえ、そこにいるわけだからね。ともかく、僕は調子が悪いなんてことはなかったよ。」 「そうか、それならいいんだが。」 金田が選手達を大声で呼び集め、ランニングがはじまった。 走りはじめた途端に汗が噴き出してくるのがわかる。堺の数歩後ろを走りながら、ジーノは目端で達海を見た。広報嬢が聞いていれば失神してしまいそうなことをしゃべっていなければいいのだが、馴染みの記者に囲まれ悪そうな顔で笑っている。 あのとき僕の調子は悪くなかった。調子が悪かったのは達海だ。 選手達の抱える困難や生い立ち、怪我、監督とのあるいはチーム内での確執などは本来サッカーには関係無いことだ。そういうことをピッチに持ち込み、引き摺りながらプレーをしてはならないのだ。 選手達はピッチの上でただひたすらにボールを追い、ボールを蹴る。マスコミも、スポンサーもオーナーも、もちろん監督でさえもピッチには入ることができない。 東京ヴィクトリーの10番ともなれば、怪我を庇い怪我に見合ったプレーをするなどありえない。達海猛という男もかつてそうだったはずだ。そうしてだめになった。 昼食に食べたポモドーロのトマトの水煮は、いつだったか達海と出掛けたときに買い込んだものだった。随分と遅い時間までキューバ料理屋にいて、そのあと深夜営業をしているショッピングストアに立ち寄ったのだ。 キューバ料理屋で豚の脛肉のローストだの海老の串焼きだのといったキューバ料理を食べながら、達海はモヒートを飲んだ。モヒートはラムを砂糖水で割りミントの葉を大量に混ぜ合わせたキューバのカクテルだが、キューバ料理の味が濃いこともあって達海はモヒートを何杯もお替わりし酷く酔っていた。 ジーノが押していたショッピングカートにトマトの水煮の缶詰を山程入れ、達海は腹を抱えて笑っていた。 汗に塗れた選手達を見回して達海は言った。 「俺がこのキャンプでお前達に求めることはたったひとつだ。そしてそれがなにかは秘密、誰にも教えない。」 薄く笑う達海を見詰め、選手達は沈黙した。現役の選手だと言われてもおかしくない年齢とはいえ、それにしても監督の言葉とは思えない。 それはまるで炎天下で延々と走り続けて咽喉がからからに乾いている選手達の顔を無理矢理に上向かせ、その舌の上に一匙の水をのせてやるようなものだ。 水は飲ませてもらえない。選手達は舌の真ん中を窪ませるようにして丸め、達海を見詰める。唾液が口一杯に溜まり、水を飲むことしか考えられなくなってはじめて達海はそれを許すのだ。 達海は選手達に飢えを教えている。ジーノもまた、飢えを言葉でしか知らなかった。 開幕前のキャンプと違い、中断期間中に行われるキャンプは短い。 大抵は戦術の確認と修正もそこそこに後半戦の準備に追われることになる。初日から数時間といえども無駄にしたくないと眉間に皺を寄せる村越を揶揄するように、ランニングのあと選手達は達海の悪企みに一日中引き摺り回された。 以下続く