磔刑台(十字架)
- ¥ 9,000
広場に設置された舞台。 舞台を取り囲む群衆。 群衆の中を、一歩ずつ、踏みしめるように足を動かす、ひとりの少女。 人生最後の舞台。 己の意思で、その一歩を踏み出すことを決めたあなたに、最大限の称賛を。 【磔刑台(十字架)】 日照りや疫病。 嵐や山火事。家畜の事故死はもとより、扉の角に小指をぶつけたというような、馬鹿馬鹿し些細な不運。 ありとあらゆる『不快なこと』を集約し、言語化することに成功した群衆は、口々にこう叫びます ――魔女め、と。 他にも、悪魔の娼婦だとか、災いの呪術師だとか言われていますが、要するに日頃から感じている閉塞感を可視化し、憤りをぶつける吐口として『自分以外の可哀想なヒト』を与えられた群衆は、悪意ある喜びに満ち満ちていました。 ご主人様も、そのあたりの機微を理解していらっしゃるのでしょうか。 『自分以外の可哀想なヒト』がよく見える処刑方法として磔刑台を選んでいるようです。 わたし個人としては、万が一にも本当に彼女が魔女である場合を考えると、身体をちゃんと燃やして欲しいな、なんて思います。 まあ、聖なる十字架を背にしていることですし、教会が良しとするのですから、間違いで復活する、なんてことは起こり得ないのでしょうけれど。 いずれにしても、処刑を命じたご主人様は、あまり乗り気ではなさそうな表情で十字架を眺めていらっしゃいます。 ひとの生き死にを左右するのではなく、死、あるのみである処刑。 血を見るその行為は、ご主人様の絶妙な『いじめ』の琴線からは外れることになっている様です。 故にわたしは、普段とは少し違った気持ちで――つまりは、ご主人様の気持ちを忖度することなく気楽に――他の下男たちにと一緒に、少女を十字架の横木に括り付けました。 既に酷い扱いをされていたのでしょう。 少女はうなだれたまま、暴れる事なくくくりつけられて行きます。 しかし。 少女は、群衆に負けてはいませんでした。 それどころか、ちゃんと理性と、正当な怒りを保っていたのです。 なぜなら。 ――次は、あなたなんだから。 そんな風に、わたしを罵ってみせたからです。 わたしはてっきり、こういう『祭り』の様な処刑では、薬かお酒かで意識を朦朧とさせて恐怖を取り去ってあげているものだとばかり思っていました。 だって、わたしだったら、怖くて怖くて、その場から一歩も動けないに違いないからです。 しかし、この少女は違います。 己の死を願う群衆に向かって、意志を持って自分で歩んできたのです。 傑物とは、きっと、この少女の事を言うのでしょうね。 心から感服したわたしは、少女を正面から見つめ、にこりと笑って見せました。 出来る限りの笑みを向けてあげられたと思っています。 だって、これから死ぬんですもの。 出来るだけ気分良く死ねるようお手伝い差し上げるのが、人情というものでしょう? だから、本当に不思議なんです。 なぜわたしは、彼女に、唸るような形相でにらまれることになってしまったのでしょうか……。 【商品説明】 ・レジンで出来ているようです。 ・塗装が済んでいるようです。 ・表面に木目など、ざらざらした加工が施されています。 ・木や金属のような外観ですが、持ってみると意外に軽いです。 びっくりする方が数多くいらっしゃいます。 ・人形(=ルミティア)はサイズ感、使用例です。(付属しません) ・表面にベタつきがある場合、陽光で半日ほど天日干しにしてください。 ――こんな陰鬱な『器具』を、天日干し……? 【塗装について】 ・Mr.COLORをエアブラシ使用&TAMIYAウェザリングマスター併用でペイントしています。 ――もはや呪文ですね。 ・銀吹きした本体に銀・茶色を基調に赤・黄・黒色で墨入れしています、と説明するように言われています。写真では色が撮影しきれていませんが、見る角度、ライトによって見た目が多少変化する、とのことです。 ――写真ってなんでしょう? ・実物は、赤っぽくなったり黒っぽくなったり、見る向きによって若干色味が変わります。 ――表面に細やかな模様が入っているので、同然だと思いました。 【購入に際して、事前に確認いただきたいこと】 3Dプリント出力品は、薄さ、細さ、長さに応じて、パーツに反りが発生します。 ――木材や金属より繊細だ、ということはわかりました。 ・出荷時には問題なくとも輸送時の環境(温度状態)や時間経過とともに反り、変形が経時変化として発生することがあります。 ・出荷時に検品し、問題なことを確認して発送いたしておりますが、出荷後に変形したものまでは責任を負いかねます。 ・当ショップの商品は、3Dプリント出力後に手作業で組立、塗装を行っています。したがって、商品には必ず『個体差』が生じます。 メーカーの射出成型品のような品質をお望みの方には当ショップの製品はご満足いただけない可能性がございます。 ――貴族さま方の言葉は、平民のわたしには知るよしもありませんね。ご主人様が、わたしたち領民のために商人とお付き合いがあるということだけは理解しました。 ……女の子を『いじめて』『よろこぶ』『悪癖』がなければ、素晴らしいご主人様なのですけれど。