虜囚の肌着
- フルセット¥ 7,500
- 服のみ¥ 4,000
- 鎖のみ¥ 3,500
――金でわたしの自由を買おうだなん奴に、わたしを自由にされてたまるか。 今までの『商品』さんとは明らかに違う『何か』を、わたしは少女の中に見つけたような気がしたのです。 【商品説明】 ======= メガミデバイスとは、ボディ以降の『腕/足/ヘッドパーツと共用』です。 付属しているボディパーツを通じて、着せ替え等をしていただく想定でデザインしております。 ======== ・服が脱がせます。 ・乳房はありますが、乳首はありません。 大事なことなので、二回言います。『乳首』は『ありません』 ・送付物は4枚目になります。 ・画像の状態にするには別途『メガミデバイス』が必要です。本商品のみでは完成しません。 ・レジンで出来ているようです。 ・レジンを着色して、色味をだしています。 着色する都合上、印刷ロット毎に、多少のばらつきが発生します。 ・塗装はしていません。 ・未塗装でも映えます。ちょっと色を塗ると、もっと映えます。 ・細くて折れやすいので、注意して扱ってください。 ・サポート材の痕は未処理です。 ・仮組は出来ますが、嵌合には調整が必要です。ヤスリや接着剤での微調整をご提案いたします。 ・メガミデバイスと互換性があるように作っていますが、嵌合部の調整は『必ず必要』です。 ・手足やフェイスパーツはサイズ感、使用例です。付属しません。 このページからの購入では、『無塗装』です。 ・表面にベタつきがある場合、陽光で半日ほど天日干しにしてください。 こんな陰鬱な『器具』を、天日干し……? 【購入に際して、事前に確認いただきたいこと】 3Dプリント出力品は、薄さ、細さ、長さに応じて、パーツに反りが発生します。 ――木材や金属より繊細だ、ということはわかりました。 出荷時には問題なくとも輸送時の環境(温度状態)や時間経過とともに反り、変形が経時変化として発生することがあります。出荷時に検品し、問題なことを確認して発送いたしておりますが、出荷後に変形したものまでは責任を負いかねます。 当ショップの商品は、3Dプリント出力品です。 したがって、商品には必ず『個体差』が生じます。 メーカーの射出成型品のような品質をお望みの方には当ショップの製品はご満足いただけない可能性がございます。 ――貴族さま方の言葉は、平民のわたしには知るよしもありませんね。 ご主人様が、わたしたち領民のために商人とお付き合いがあるということだけは理解しました。 ――女の子を『いじめて』『よろこぶ』『悪癖』がなければ、素晴らしいご主人様なのですけれど。 ======とある少女の日記帳より抜粋====== ――こいつに『教育』を施す価値があるか? ――『うっかり』死なせて出世が閉ざされるのはわたしなんですよ? ツケで構いませんから、医者を手配なさい。 ――価値のないモノを価値があるように見せかけて売っぱらってこそ、か。 いわゆる、豚に口紅を塗って売っぱらう、という事なのでしょうか? 丁稚のおふたりが、興味深い会話をなさっていました。 わたしのような『冷やかし』がいるなどとは、微塵も思っていないのでしょうね。 トトノさんは、苦虫を噛み潰したような笑みを浮かべて注意しに行かれます。 ひとりになったのを良いことに、わたしは檻の中の『商品』さんたちをぼんやりと眺め歩くことにしました。 そして、奥の檻にいらっしゃる、一際くたびれた『商品』さんが床に突っ伏していらっしゃるところで足を止めます。 なぜ、と言われると困るのですが。 『商品』さんたちを『そこそこ』『丁寧』に扱うのがトトノ商会さんです。 ですので、ご主人様が『いじめ』ているのと似たような状況の『商品』が、物珍しかったのだと思います。 積荷として転がる『商品』さんは、察するに余るある、過酷な旅をなさったようでした。 背中には黒々とした焼印の跡が残っているのですから。 焼印を押されたモノがどんな反応をするか、わたしはよく理解しています。 意思の力に関係なく身体が反応し、脱兎の如く床に突っ伏し、のたうちまわるのです。 指先が真っ白になるほど強く拳を握り締め、食いしばりながら手足を丸めながら、痛みが最も少ない姿勢に落ち着くまでが最も苦痛の伴う時間ですね。 そして、襲ってくる激痛を堪え、呼吸の微かな隙間で痛みを飲み込み、受け入れるように努める事が唯一苦痛から逃れる方法だと体得する……。 正しく悪夢ですね。 膿んだ傷口と癒着した服を脱ぐのが再びの悪夢で、傷口を医者に焼かれることが三度目の悪夢、でしょう。 そしてこれから、わたしのような人間に商品として好奇と哀れみの視線にさらされる……。 値踏みする商人や仄暗い劣情を抱いた面々と向き合う少女が纏うのは、肩口に結び目のある薄い肌着一枚のみ……。 前途多難な『商品』さんに対して、わたしは祈りを捧げずにはいられません。 せめて、優しいご主人様に巡り合いますように、と。 そんなわたしの声が届いたのでしょうか。 檻の中の『商品』さんが、微かに顔をもたげてわたしを見たのです。 目が合いました。 わたしは、感情を殺しきり、ヒトの心を表すものとしての瞳を想像していました。 精々、泣き潤む双眸を向ける程度だろうと踏んでいたわたしは、その視線に釘付けになったのです。 少女の瞳は予想通り、何の感情も浮かんではいません。 しかしその瞳には、ヒトの心であれば奴隷であれ貴族であれ必ず持っているような『何か』が決定的に欠けているように、見えました。 彼女の瞳は、魂の宿った石像のような。 あるいは、美しさ故に不吉さを纏った宝石のような。 そんな、予想通り感情の滲まぬ、しかしわたしの心を見透かすような強烈な『何か』を訴えかける目で、わたしを見ていました。 わたしに問うていました。 わたしの生き方を。考え方を。在り方を。 その視線はわたしの肌を貫き、肉に食い込み心を鷲掴みにするかのように捉えて、離さないのです。 緊張しているのはわたしで、檻の中の少女の方が支配者であるかのような錯覚に、わたしは俗りとしました。 完全に、わたしは彼女に呑まれていました。 わたしの身体が、緊張のあまり震え始めたころ、ようやく少女は乾いた唇の端を軽くまげ、か細く、かすれた、しかしはっきり耳元まで届く不思議な声でわたしに言いました。 ――金でわたしの自由を買おうだなん奴に、わたしを自由にされてたまるか。 これが、『呑まれた』という感覚なのでしょう。 今までの『商品』さんとは明らかに違う『何か』を、わたしは少女の中に見つけたような気がしたのです。 冷やかしだけのつもりだったわたしの心を、根底から揺さぶるほどの衝撃。 囚われ、痛みつけられていなければ、この少女はどのように花ひらいたのか? それを、わたしは傲慢にも……。 だからこそ、あの時。 わたしは、少女が最も嫌う金という手段で、少女の自由を自分のモノにすることを決意したのです。