
中高一貫の女学院、高理女学院中学高等学校に通う中学一年生、「並一通りの」優等生である亜麻透子は、友人も持たず家族とも距離を置く代わりに、一つの秘密とそれを明かす場所を持っていた。 誰にも顧みられない蟻に餌を遣ることを、少し「特別な」趣味にしていた。 しかしそうやって誰にも触れず関わらないようにしていた彼女の前に、見知らぬ一人の少女が泣きながら駆け寄ってきて……。 「──なんて、呼べばいい?」 わたしは、亜麻透子は、そう問いかけた。 「お姉ちゃんって、呼んで」 私は、滝野茜は、そう答えた。 わたしは並一通りだ。 私は埋没している。 だけどわたしたちは、特別だ。 文庫本文272ページ、挿絵5枚。完全新作。
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