- ¥ 200
昨年の6月のイベント「星駆ける夜のハイライト3」で頒布させて頂きました走灰コピー本です。 A5サイズ/二段組/本文19ページ/全年齢/¥200 申し訳ございませんが一部文字サイズが違ってしまっている行があったりします(画像3枚目。読む分には問題ございません)が それでも…と思って下さるようでしたら… ご理解頂きました上でお手元に迎えて頂きましたら幸いです。 よろしくお願いいたします。
<一緒に、見たい。> 大学生ランナー達の朝は、慌ただしい。 何せまだ通勤通学の人影も本当にまばら、パン屋もカフェも開いていない時間から朝練でひとっ走りして その後、大学生としての生活を送らないといけないわけだから当然といえば当然でもあるのだが、 今はまだ一年生で授業数も多い走ならそれは尚更な事だろう。 朝練が終わってから朝食までの時間もせわしない流れで進んでいくが、 そんな中でも走はスマホを必ず一度手に取りメッセージを確認するようにしている。 とはいえそんなルーティーンが身に着いたのは 清瀬が箱根後に病院に担ぎ込まれ、その傷故にそのまま入院となってからなので、まだほんの最近になってからだ。 毎日のように可能な限り、それこそ忠犬のように足繁く清瀬の病室を見舞っている走なので、 実務的な意味で清瀬とのメッセージのやり取りがそこまで重要性があるかと言えばそんな事もないのだが。 アオタケに清瀬がいてくれたら当たり前に交わしたであろう日常会話みたいなものを短文で、 走と清瀬は時折送り合うようになった。 練習内容などは新キャプテンとなった神童としっかりやり取りしているようなので 走はそこにはあまり深く踏み込んだりしない。 ニラの画像に始まり、買い出しで手に入れたそれはそれは立派な大根の画像などを送ったりして それに返信が送られてきたりといったような他愛もないばかりだが それでもそんなやり取りの時間は楽しいし、清瀬からの返信が待ち遠しいと思ってしまう走なのだ。 <鼓動> 深夜だから当然といえば当然なのかもしれないが、静かだ。 街の環境音も街頭の灯りもほとんど感じられないのは 数時間前に走によって窓も、そして遮光カーテンもきっちりと閉められてしまったからかも…しれないな。 目を覚ましたばかりの清瀬はぼんやりとそんな事を考えながら 寝室の天井にぶら下がっている、 買うときにあまり深く考えずにその安さとデザインのシンプルさで選んだ白の小さなUFOみたいな形のペンダントライトを 今、視界に入れている。 そのペンダントライトの豆電球だけが 決して広くはない清瀬の寝室を照らす灯りの供給源で、 その抑え目なオレンジ色の光は 賃貸住宅にありがちな無機質な白い天井や壁も、幾分か温かみがあるように感じさせてくれる。 夏向けにと選んだ肌触りのいい綿素材のシーツの上に今、 何も身に着けていない、剥き出しの身体が二つ、横たわっている。 その一つは今こうして天井を見つめている清瀬で、もう一つはもちろん走だ。