夢を継ぐ者たち
- ¥ 200
昨年の12月24日のイベント「星駆ける夜のハイライト4」で頒布致しました走灰コピー本です。 A5サイズ/二段組/本文18ページ/全年齢/¥200 ワンドロライ参加作品を加筆し再投稿しました全7作品です。 (画像2が本の扉でして、全作品タイトルです) 申し訳ございませんが、一部文字のサイズが微妙に違ってしまっている行があったりしますが(画像3枚目。読む分には問題ございません) それでも…と思って下さるようでしたら… ご理解頂きました上でお手元にお迎え頂きますと幸いです。 よろしくお願いいたします。 こちらを購入してくださった方には 現地で配布した無配本を付けさせていただきます! (こちらのコピー本は走灰色がほんのり程度で 「走る」という行為で繋がっている二人の姿を中心に書いてみた作品が中心となります)
<夢を継ぐ者たち> 梅雨が明け、もはや熱帯になってしまったのかと嘆きたくなるような東京のうだるような暑さが、遂にやってきた。 そしてそんな灼熱から逃れるかのように 大学生の本分でもある前期試験を終えたランナーたちが、一斉に避暑地に向かう時期もまたやってくる。 夢の箱根を目指す為、それぞれの目標達成の為にまさに過酷な走り込みに集中する、夏合宿のシーズン。 そんな仲間の一員として、正式にマネージャーとなって三年目の葉菜だか 白樺湖合宿に参加する回数は一学年上の走、そして双子と同じ四回目だ。 同学年の部員達より一回多いのはもちろん 自分があのアオタケの一年間に関わるようになったのが高校三年生の時だったからで 正式な意味でのマネージャーでこそなかったが、 あの一年の一員でいられた事は、葉菜にとっての密かに誇りなのだ。 … <継承> 「新年、あけましておめでとうございます。 今日の日の出は六時五十一分、ここ大手町も穏やかな日の光を浴び始め…」 お馴染みのアナウンサーの声が、 ジョグに行った走の帰宅を待ちながら雑煮の用意を始めようかと台所に立っていた清瀬の耳に届いてきた。 <今年>という一年を昨日迎え、そして今日。ついに始まる、今年の箱根本戦。 放送時によく流れるテーマソングは彼らが大学生だった頃から 清瀬の記憶が確かなら確か二、三回程変わった気がする。 だが今テレビから流れてくるメロデイーはここ十年程前から変わっていないもので、 清瀬にとってももうだいぶ馴染みも深くなってきた。 王子と二人でビルの谷間から見上げた朝の空の色は 今テレビ画面に映し出されているそれと変わりないはずだ。 だが、あの日からもう半世紀と少しも経ってしまったのか…。 いやいや俺も長く生きてきたもんだな、と清瀬は 視線をテレビから雑煮椀を持つ自分の右手を移して、 テレビ画面の中の若者達の若々しさと 木の枝にしがみつく冬の一葉のようになったその手を比べてしみじみ思う。