四二喪市の奇妙な一日
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この本に興味をもってくださりありがとうございます! 【本作は】 “奇妙な物語”の短編集であり、 筆者:セーイ6 の自信作となります。 『四二喪(よにも)市』という同じ市内で起こる、 1時間ごとに切り取られたドラマ。 それぞれ“数字”にまつわる奇妙な出来事がたくさん起こりますが、 それらの物語の収束する先には一体どんな理由があるのか。 別々の“時間”を過ごす、様々な人々の生活。 日常に散らばる苦悩や幸福を紐解いた作品となっております。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー “時間”にフォーカスした物語。 ▷八時、九時、から始まり十七時まで 時間帯によって『四二喪市』の見せる表情は異なります。 “職業”にフォーカスした体験。 ▶主婦や車掌など、仕事ごとに体験する奇妙な物語 あなたは仕事中、どんな不思議な体験をしたことがありますか? ーーーーーーーーーーーーーーーーー ・異質なテーマの合体した独特な読み心地 ・自らに置き換えて楽しめる、奇妙な体験 ・意外な結末、すべてが紐解かれる最後 をお楽しみください。 現実と隣り合わせの、しかしどこか現実離れした、 筆者の頭の中のイメージをそのまま作品にしました。 よければ腰を据えて、噛み締めるようにお読みください。 ▽ これからもたくさんの読みやすい短編集を本にしてお届けします! 新作の通知のため、ぜひ BOOTHのフォローをして 応援よろしくお願いします! また、割引キャンペーンやプレゼント企画の告知などもしますので、 SNSのフォローもよろしくお願いします! Ⅹ(旧Twitter):@say6novel 著者:セーイ6
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更にもう一話ぶん! noteかPDFで試し読み出来ます! note↓ https://note.com/say6novel/n/nafe49cbab5f0 ------------------------------ 『八時:主婦の時間』 朝、早起きする。やることが沢山ある。 お弁当、朝ごはん、作るのも盛るのも並べるのも、全て私。作れば片付けなくちゃならない。愛する夫と娘、知ってか知らずか食卓の上のお皿はみんなそのまま。 娘の学校の準備、忘れ物の管理は私の役目。 もちろん夫は関与しない、何かあれば火種の元だからって。それもそうねと思うけれど。 私が洗った服、私が磨いた靴、私が用意した鞄、私が入れた教科書、私が作ったお弁当。家族は当たり前のように生活している。なに不自由ないって顔で、玄関の扉を開けて出て行く。食器を片付けて、テーブルを拭いて、掃除と洗濯が待っている。「いってらっしゃい」を笑顔で言った後の“私の時間”を二人は気にすることがあるのだろうか。 私の家事を手伝ってくれる人は居ない。 私のお昼ご飯を作ってくれる人は居ない。 私の買い物についてきてくれる人は居ない。 「おかしいな… いつもこんなこと考えないのに…」 たまに、こんな風に考えてしまう。自分のしていることが無価値に思えてしまう。そんな筈もないと分かっている。二人は家族で、私は母親。家事は見返りを求めるようなものでもないし、二人に貰っているものもある。夫は稼ぎで家庭を支えてくれているし、娘はその成長で夫婦に生き甲斐を与えてくれる。 分かっていても、人間、不思議と気分が落ち込んでしまう日があるというものだ。 「少し、テレビでも観ようかな…」 少し、少しだけ、家事から離れよう。掃除も洗濯も、いつもならテレビを観ながらする。もしくは夕飯の献立(こんだて)を考えながら、それか夫や娘の今月の用事を整理しながらだ。 そんな“ながら”の時間ばかりだと気が滅入(めい)ってしまう。そんな時は家事や育児から解放されて、ほっと息をつく時間が必要だ。テレビではニュースや注目の新作映画、スポーツなどの話題に合わせて、芸人やタレントが合いの手を入れている。いつもの繰り返し、聞いたことのあるようなモノばかり。それでもいくらか、気分を落ち着かせることが出来た気がした。 「あ、まずい、時間を無駄にしちゃった。」 顔を上げれば、時計は八時十五分を指している。私は首を傾げ、電池を取りにゆく。 「あれ、おかしいな?だって…」 八時十五分、夫と娘がいつも家を出る時間。 時計が、その時間で止まっていた。あぁそうか、電池が切れたのだろう。このままでは皆が困るので、直しておかなくては。そう電池を取り、戻ってくると、時計は八時十六分。動いていた。 「あれ、さっきは止まっていたのに…」 私は時計の横に電池を置くと、なんだか不思議な体験をしているように思えて、テレビを確認してみる。画面には、先ほど見たニュースが、一言一句違わずに再放送されている。 「え、なにこれ…」 生放送の朝のニュース番組。繰り返し放送し伝えることはあっても、こうも同じテンポ、同じ表情で流すことが出来るだろうか。 怖くなり立ち尽くした私が、ハッとし時計を見ると、八時十六分。時計は止まっていた。 「なにこれ、どういうこと…?」 私は怖くなり、気分を落ち着かせようと台所へ。食器を洗い始める。モヤモヤするが、疲れているのだろう。むしろテレビで過ぎてしまった時間が返ってきたと思えば、ありがたい。そう思い込み、無心で手を動かす。終わったら掃除に洗濯だ。あぁそうか、食器が乾いたら、後でしまわなくちゃ。食器を洗い終えて、恐る恐る時計を確認すれば、八時半。時計は動いていた。 「よかった…やっぱり疲れてるんだ。」 ホッと気の抜けた私は、食卓の椅子へ腰掛ける。なんだか今日は駄目な日かもしれない。朝からそんな気分になり、机に突っ伏す。 ・・・ 「ハッ、、寝ちゃった?」 うっかり、うたた寝してしまっていた。 あぁもう、まったく私は何をやっているんだろう。そう髪をわしゃわしゃとしてみる私は、あることに気づき固まる。 「時計が、動いてない…?」 八時半。時計が指す時間は、変わっていなかった。いや、おかしい。絶対に寝てしまっていたし、焦るほど時間は経っているはずだ。 そう思いすぐに時計を裏返しカバーを外す、横の電池をつまんで、すぐに入れ替えた。 時計は、うんともすんとも言わない。壊れているのは時計自体か。まるで時を刻むのをサボるかのように、動かなくなってしまった。 「・・・サボる…?」 私は不意に思いたち、掃除機を出してくる。時計を見ながら徐に、掃除機のスイッチを入れた。カチ、カチ、と時計は動き出す。掃除機の音で掻(か)き消されつつも、針は時を刻み始めた。そうか、私は掃除機を手放す。カシャンと床へ転がる掃除機を、私は拾わない。 「神さまが、休めと言っているんだわ。」 こんな時ばかり都合よく神などのせいにして、私は思いきりサボり始めた。ポテチやどら焼き、家のお菓子をかき集め、袋を無造作に開ける。飛び散ろうと構わない、今だけは家族が困るなどというのは考えない。お気に入りのワインを用意して、自分だけのパーティ開催の準備を整えれば、気分は最高潮だ。時計を確かめれば、八時半。変わらず。そしてテレビをつければ先ほどより進んだものの、一度見た内容の再放送をしている。 「やっぱり…これってすごい。」 つい笑みがこぼれる。私は気づいた。家事をサボる間だけ、時間が止まっている。 実際にはテレビが観られるので、ループ?しているのかもしれないが詳しいことは分からない。夢かもしれないがとにかく、やりたい放題だ。 「録り溜めしてたドラマ観ちゃおう。」 朝と打って変わって、私は浮かれた表情でこの不思議な現象を謳歌する。久しぶりの自由な時間だ。残った録画を全て観て、お菓子を食べて、ワインを飲み、昼寝をして、起きたらアイスを片手に本を読み、ソファーでダラダラする。何度確かめても、時計は八時半のまま。夢は覚めない。 「あー、楽しい。次は何しようかなー?」 すっかり羽を伸ばし、遊び疲れてきたころ。 ピンポーン 呼び鈴が鳴った。誰だろう、時間は止まっている?ハズなのに。私は少し警戒しながら、インターフォンの画面を覗く。 「ありがとう、お母さん。」 突然、思いもよらない言葉が飛び込んだ。 画面越しに立っているのは、知らない子供。 娘の友達かな、知らない男の子だ。男の子が私に、お礼を言っている。 「あなた、誰?家を間違えているわよ。」 隣の家の子かもしれない。きっと家を間違えたのだわ。 「お母さんって、すごいです。」 戸惑う私をよそに、男の子は話し始めた。 今日は不思議なこと続きだ、私はつい惹き込まれるように聞き入ってしまう。 「ご飯を作ってくれて、服を洗濯してくれて、帰ってきた時にドロドロの靴も、次(つぎ)外に行くときはピカピカだし。僕より学校の行事に詳しいし、なくした物はすぐ見つけてくれるし、宿題やらないと怒るけど、頑張れば褒めてくれる。優しくて強いんだ。」 私は、持っていたポテチを、床に落とす。 「もっと、お母さんを褒めてあげればよかった。大好きだよって伝えればよかった。お父さんと三人で、たくさん遊べばよかった。」 何故だろう、知らない子の言葉が、キュッと胸に突き刺さる。私の目から涙が、ポロポロとこぼれた。 「あなたも、よく頑張ってるお母さん、ですよね。少し休みたくなるの、分かります。」 うん、うん、と頷くことしかできない私。 どうしても、言葉が詰まる。 「でも、やっぱり家族のために、頑張るお母さんが僕は好きです。」 「ちょっとだけ、息抜きしていただけですよね。それも必要なんですよね、でもいつかはまた、いつものすごいお母さんに戻らなくちゃならない。それを伝えに、これだけ伝えに来たんです。」 そうか、自分の時間が無いのが嫌だったんじゃない、家族を忘れたかったんじゃない。私はただ、私のしていることに気づいて、こう言って欲しかっただけなんだ。それで時間が止まってしまっただけなんだ。 「いつもありがとう、お母さん。」 その言葉を残して、画面は途切れた。 電車の遅延のニュースが流れて、 私の時間が動き出す。 ------------------------------ ここまで読んでいただきありがとうございます。 他にも多数の試し読みをご用意しております! 少しでも気に入った作品あれば、続きのご購入をご検討くださると幸いです! 今後とも応援よろしくお願いいたします。
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