記憶を売る情報屋
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この本に興味をもってくださり、ありがとうございます! 【本作は】 ↓ セーイ6の自信作となっております! 「記憶の売買」を軸に人間ドラマが描かれた、短編集です。 雑多な通りの裏路地にひっそりと佇む、古びた雑貨屋。 その奥にあるのは、人の“記憶”を売り買いする情報屋。 訪れるのは、後悔、罪、恐怖、愛欲——何かを“なかったこと”にしたい人々。 彼らが売る記憶は、やがて別の誰かに買われ、新たな人生を動かし始めます。 失われたはずの記憶が、他人の中で生きていく。 記憶を媒介にした、全十話の切実で、どこか歪んだ連鎖の物語です。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 筆者の伝えたいこと ▷ 誰かに捨てられた記憶が、誰かの人生を形作るという皮肉 ▶「本当の自分」とは、記憶によって構成された幻想かもしれないこと そんな問いを、情報屋と客の対話の中で、奇妙な物語として紡ぎました。 誰かの”絶望”の記憶が、思いもよらぬ形で“他人の希望”になる世界。 その歪さに、どこか安堵すら覚えるかもしれません。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー ①ダークな静けさと、人間の業を静かに描く物語が好きな方 ②一話完結の連作形式、簡潔に繋がりのある物語を楽しみたい方 ③“幸せとは何か”、“忘れることは救いか”という問いに触れたい方 そんな読者の方に、深く味わっていただける作品です。 少しだけ煙たい空気の中で、 あなたの中の「忘れたいもの」と「欲しいもの」に、気づくキッカケとなる物語になれば幸いです。 ▽ これからもたくさんの読みやすい短編集を本にしてお届けします! 新作の通知のため、ぜひ BOOTHのフォローをして 応援よろしくお願いします! また、割引キャンペーンやプレゼント企画の告知などもしますので、 SNSのフォローもよろしくお願いします! Ⅹ(旧Twitter):@say6novel 著者:セーイ6
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更にもう一話ぶん! noteかPDFで試し読み出来ます! note↓ https://note.com/say6novel/n/n728dfa61a736 ------------------------------ 『浮気をした女』 その雑貨屋は、町の表通りから一本外れた裏路地にひっそりと佇んでいた。看板も出さず、薄暗いガラス越しから気紛れに店内を覗こうとしても、整然と並ぶ古びた棚と商品の輪郭が見えるだけ。人知れず佇む、怪しげな雑貨屋。この扉を開く者は、みな“特別な目的”でこの店を訪れる。 カラン、と小さなベルの音がした。 「いらっしゃいませ。どうぞ、奥の椅子へ」 店主の男は、無表情のまま柔らかく言った。彼の年齢は不詳。清潔な白いシャツにグレーのベスト。物腰は穏やかだが、瞳の奥には底の見えない光が宿っている。 「…記憶を、買いに来ました…」 来店した女性が言った。 ヒールの音を立てぬよう、静かに歩く彼女は、二十代後半ほど、メイクも服も隙がなく、エリカ、と名乗った。 「エリカ様、いらっしゃいませ。 なにやら…切羽詰まったご様子と、お見受けします」 店主は意味ありげに微笑みながら、カウンターの奥から書類を一枚取り出した。それは帳簿のようで、手書きの記録用紙に、今日の日付と名前が淡く記されている。落ち着かない様子で店内を見渡すエリカへ、声をかけた。 「今日は、どういったご相談で?」 エリカは、深く息を吐いて、言った。 「浮気を、しました。私には愛する恋人がいるのに。 昨晩…行きずりの人と…。 酔っていて、相手の名前も覚えていません。 後悔、しているんです…。彼の顔を見るたび、吐き気がするぐらい、罪悪感が募って…」 「なるほど。それで、そのご記憶を」 「…売りたいんです。…全部、忘れたい」 店の奥隅、金属製の奇妙な椅子が、スポットライトに照らされて静かに佇んでいる。そこには、頭を覆うように丸く開いた枠があり、黒い機械が備え付けられている。 「引き換えに、何か記憶を受け取られますか? 今でしたら、“初恋の甘い思い出”や、“長く一緒に居た人を愛し続けた記憶”など… お客様の今のお心を、補う記憶がございます」 「…要りません」 きっぱりとエリカは断った。顔を上げ、その目には強い決意が宿っていた。 「私の想いは、もう彼に向いているから。それ以外は必要ない。…もう裏切らないって、決めています」 情報屋は頷く。 「承知しました」 と静かに言うと、彼女を椅子へ案内する。 頭に装着された機械が低く唸りを上げ、照明が一度だけ明滅する。 それから数分後 エリカは目を開け、ふわりと笑った。 「…あれ、なんだか、すごくスッキリしてる」 「お疲れ様でした。記憶は確かに、受け取りました」 「…うん、どうもありがとう」 彼女は柔らかく微笑んだ。その笑顔に、さっきまでの苦悩の色はない。エリカはバッグを持ち、軽やかな足取りで店を出て行く。 ドアが閉まり、ベルがカランと、もう一度だけ鳴る。 沈黙の中、店内にポツリと声が響く。 「なにしてる?なにしてる?」 喋るインコが、棚の上から首をかしげて、問いかけた。 情報屋の男は、カウンターの上でカップを拭きながら、口元を緩めた。 「 あぁ、今の幸せそうな記憶を少しだけ、拝借させて貰っただけさ。きっと“次”に、使えるからね」 静かに微笑むその表情は、不敵とも冷酷ともつかない。 やがて、男が何かを書き終えると、帳簿はバタリと音を立てて閉ざされた。 一目のつかぬ裏路地の、怪しい雑貨と情報屋。 今日もその場所に、新しい記憶が、ひとつ加わった。 ------------------------------ ここまで読んでいただきありがとうございます。 他にも多数の試し読みをご用意しております! 少しでも気に入った作品あれば、続きのご購入をご検討くださると幸いです! 今後とも応援よろしくお願いいたします。
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