第1話、第2話、第3話回帰線シリーズ超短編
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## 第1話(無料) ### 判断だけが残る場所 ロンドンへ行く前後、私の中で、世界との距離が急に変わった。 何かが起きた、というより、何かが抜け落ちた感覚に近い。 それまでは、制作を続けるかどうかを、理由で支えていた。 評価、期待、可能性、不安。 それらを秤にかけ、まだ描くべきだと判断していた。 だが、ある時期から、判断だけが残った。 意味は後退し、感情は遅れてやってくる。 続けるかどうかを問う以前に、手が動いていた。 ロンドンという都市は、その変化を加速させた。 言葉が通じない環境、寒さ、孤独。 説明できるものが、ひとつずつ削られていく。 制作は、慰めにならなかった。 救いにもならなかった。 ただ、やめる理由が見つからなかった。 やめない、という判断だけが、静かに残った。 この文章は、体験記ではない。 何かを説明するためのものでもない。 世界と切断されたあと、 判断だけで制作が続いてしまった、その地点を記録するためのものだ。 PDF/A4/3ページ
