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2024年3月17日HARU COMIC CITY 32内 どうやら出番のようだ! 38にて頒布しましたセロ上本です。 「幸福連鎖」 A5/本文26ページ/全年齢 会場頒布価格に梱包代と手数料を加算した価格となります。 ※フ゜口ヒ設定 ※捏造の名前ありセリフあり同期ヒ一口一がいます
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春、と呼ぶにはまだ気が早いんじゃないかと思うほどに冷たい風がヒーロースーツの隙間から入り込み、反射的に首をすくめ体を縮こませた。隣で腕をさするバディに、ちょっとホットコーヒー飲みたくね?なんて言っていると、どこからか泣き声が聞こえてきた。 「タクティップ」 辺りを見回し交差点近くで立ち止まっている数人の間から小さな女の子が見えると、俺はバディの名を呼んですぐに駆け寄った。 「すいませーん、状況教えてください」 女の子のそばにいた人たちそれぞれに話を聞いて、俺たちは状況確認を行う。 「私が通りがかった時にはもうぐずついていたんだけど、それから十分は経ってるわね」 俺が話を聞いた女の人が、女の子をなだめながらそう教えてくれた。思ったとおり、女の子は迷子だった。タクティップが話を聞いた二人はカップルだったようで、女の人よりも少し前に通りがかり、泣いているのでほっとけないと足を止めたものの、小さな子と接したことがないからどうしたら良いかわからなかったと申し訳なさそうだった。 ~中略~ 「あ、そう言えば俺、こないだ逆プロポされてさぁ」 二杯目のレモンハイを飲む前にそうこぼすと、向かいに座る瀬呂が飲んでいたウーロンハイを吹き出した。 「きったねー‼ なにぃ⁉ なに噎せてんの⁉」 「ゲホッ ごめ、ゴホッ」 「いや、言うほど被害ねーけど。あ、すんません、ありがとうございます」 店員さんから布巾と新しいおしぼりを受け取ると、俺はおしぼりを瀬呂に渡して机の上を拭いた。瀬呂が咄嗟に手でカバーしてたから、さっき言ったように大して濡れちゃいなかった。 「あー、びっくりした」 「それはこっちのセリフなんだけど⁉」 二度ほど咳払いをして喉の調子を整えた瀬呂は、今度こそウーロンハイをごくりと飲み下した。 「え、で? なんだっけ?」 「逆プ」 「誰に?」 ずいぶんと食い気味に来た「誰に?」に、面食らった俺は思わず瀬呂を見つめてしまった。どうせネタだろってツッコミが来ると思っていただけに、わりと真面目なトーンの「誰に?」は、一瞬の間を生むのに十分だった。 ~中略~ ─セロファンがとある富豪の娘に気に入られて専属護衛になったが、あれは実質婿入りだろう そんな噂話を聞いたのは、瀬呂と会った夜から二カ月ほど経った頃だった。事務所のロッカー室で着替え中だった俺にとっては寝耳に水で、思わず「婿⁉ 瀬呂が⁉」と、ヒーロー名を忘れ口走った。 「チャージ、仲いいよな。なんか聞いてねーの?」 「いや? 前にメシ食った時は、そんな相手がいるなんて言ってなかったけどな……」 「そっか。なんか漫画みたいな展開だし、尾ひれ(・・・)背びれ(・・・)じゃねーかって思ってんだけど」 首を傾げる俺と同じように、タクティップも首を傾げ顎を撫でた。専属護衛ってことだし、極秘事項なのかもしれないから俺やタクティップが知らなくてもおかしくはない。それでもまあ、同級生のよしみで教えてくれてたっていいじゃねぇか水臭いって思わないでもないけど。 『婿入りすんの?おめでと』 着替え終わり、花束を持ったクリエティのスタンプと一緒に短いメッセージを送って、ロッカーに放り込んだ。『あれってまじで?ただの噂?』っていう確認じゃないのは、確認したところで俺には関係のないことだから。ただの噂、関係ないって返ってきたとしても、俺の友達ポジションは変わらない。誰もいない空席に座れるような関係性じゃないんだから、そんな確認はするだけ無駄。違うなら違うで、瀬呂から『ちげーよ』って返ってくるんだから、それでいい。