Purple Sheep Sleep
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この本に興味をもってくださりありがとうございます! 【本作は】 ↓ “夢”をテーマにした短編連作集です 夢は誰もが見るものですが、 「胡蝶の夢」や「夢治療」など、あまり知られていない夢の側面もあります。 この本では、様々な夢の姿を通して、“現実と夢の境界”を描き出しました。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 筆者の伝えたいこと ▷ ほのぼのとした夢のような空間に潜む、微かな違和感と不気味さ ▶ 誰しもの心にある「逃げたい」「夢を見ていたい」そんな弱さと優しさ をあなたへ伝えられるように 心を込めて書き上げました。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー ①ちょっと不思議で静かな、不気味な夢物語を味わいたい ②現実と夢の曖昧な境界をさまようような物語が好き ③日常の終わりに、夢のような世界へふっと浸かりたい という方に、それぞれお楽しみいただけると思います! 一話完結で読み進めやすく、寝る前にもおすすめです。 紫色の羊と夢の世界を、温かい飲み物を片手に、静かに楽しんでいただけたら嬉しいです^^ ▽ これからもたくさんの読みやすく、どこか不思議な短編集をお届けします。 新作の通知のため、ぜひ BOOTHのフォローをして 応援よろしくお願いします! また、割引キャンペーンやプレゼント企画の告知などもしますので、 SNSのフォローもよろしくお願いします! Ⅹ(旧Twitter):@say6novel 著者:セーイ6
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更にもう一話ぶん! noteかPDFで試し読み出来ます! note↓ https://note.com/say6novel/n/naeab58d5f78f ------------------------------ 『羊が一匹、』 目を開けた瞬間、私は自分がどこにいるのかわからなかった。 いや、目を開けたという感覚すら曖昧だ。光も影も、どこまでも淡く滲んでいて輪郭というものが存在しない。 すべてが紫がかった霧のようなもので満たされ、境界も、遠近感も、方向もわからない。そんな中、私はなぜかその空間に「部屋」という言葉を当てはめた。根拠はない。ただ、そう感じたのだ。 部屋の中央には、ぽつんとベッドが置かれていた。 そこだけは、妙にくっきりと存在している。紫に滲んだ、ふかふかとしたシーツ。枕の上には、もこもことした紫色の毛玉のようなものがうずくまっている。 私は昨晩、自分の部屋でいつものベッドに潜り込み、眠りについたはずだった。昼間のことも覚えているし、何をして、どう過ごしていたのかもハッキリ思い出せる。 それなのに今、目の前にあるこの光景は、現実とまるでかけ離れていた。 「・・・夢?」 思わず口に出すと、どこか遠くから、ふわりとした白い影が飛び跳ねてきた。 一匹、二匹、三匹…それは羊だった。 真っ白で、ふわふわとした丸い体。手足は短く、跳ねるたびにぽふん、と弾む音がするようだった。 彼らは無造作に跳ね回り、ぶつかり合い、私の目の前を行き来する。その数はどんどん増えていき、数えるのも億劫になるほどだった。 「なに、これ…」 そのとき、ベッドの上の紫色の毛玉が、もぞもぞと動いた。羊たちよりも少し大きく、紫の毛並みが柔らかそうに揺れる。小さな目元は閉じられたまま、まるで寝言のように、微睡(まどろ)む声が漏れ聞こえた。 「おめでとう」 え?と私は耳を疑った。 どうしていま、そんな言葉をかけられる? 「お誕生日、おめでとう」 「お誕生日、おめでとう~」 紫色の羊は、目を閉じたまま、夢うつつに微笑んでいるようだった。 どこかゆったりとした、眠たげな声。それが、ふわりふわりと、耳元に響く。 「誕生日…じゃないけど…私…」 「え?ちがったの?う~ん、そうだったっけ…そうだったかも…」 「・・・」 「キミは、今、この世界に産まれたのかと思った」 私は唖然としたまま、その紫色の羊を見つめた。 この状況に、どのような言葉を返せばいいのか分からなかった。何かを夢見ているのか、それとも夢の中の存在が私に夢を見せているのか…奇妙で曖昧な光景… 「…えっと、あなたは?」 私はようやく、そう言葉を絞り出した。 すると紫色の羊は、寝言のように微かに口元を動かす。 「ボクは、ムゥ。“ムゥ”って呼んで」 “ムゥ”、それは夢の中のような、妙に響きのいい名前だと思った。 「…ここはいったい、どこなんだ?」 私がそう尋ねると、ムゥはゆるく頭を振り、跳ねる羊たちを見やる。 羊たちは、相変わらず自由気ままに飛び跳ね、ぶつかり合い、時には私にぶつかりそうになっては離れ、どこか部屋の遠くへ消えていく。 「あれはね、紫になるために跳ねているの」 ムゥは、ぽつりとそう言った。 私の質問はそう言う意図ではなかったのだが。 「…紫になる?」 「そういうことって、あるでしょ?ずっと跳ねていればいつか紫になれるって、信じているの」 私は、よくわからないまま頷いた。 夢の中だからだろうか、少しだけ可笑しくて、でも少しだけ不気味だった。 ムゥは寝たまま、口だけで話を続ける。 「キミ、この部屋から出たいんだよね?」 「…あぁ、うん。出たい」 私が答えると、ムゥはにこりと微笑んだように見えた。 「だったらね、目が開かなくちゃダメだよ」 私は眉をひそめた。 「目なら、開いているよ」 「ううん、まだ。だって、キミ、何も見えてないもの」 私は自分の目を手で覆い、開いたり閉じたりしてみた。けれど、視界は変わらず、この紫色のモヤのような世界のままだ。 「ここには、いろんな部屋があるんだよ。何か手がかりがあるかも。ここから出る方法が、きっと、ね」 ムゥはふかふかのベッドの上で寝返りを打つ。 「ボクはここで寝ているから、好きにこの世界を過ごしてくれるといいよ」 そういって、紫羊は寝息をたてはじめる。 私はもう一度、この不思議な空間を見渡した。 白い羊たちは、一匹、二匹、と数を数えるごとに増えていき、どこまで行ってもその景色は変わらない。 「夢だろうと、現実だろうと、ここには居たくない」 そんな言葉が自然に口をついて出た。 ムゥはそれが聞こえたのかどうなのか、ゴロゴロと寝返りを打ちながら、ほんの少し笑ったように見えた。 私は深く息を吸い、軽く頭を振った。 夢でもなんでもいい。出口を探すしかない。 私はふわふわと跳ねる羊たちを避けながら、霧の向こうに微かに見える、ぼんやりとした扉へと足を進めた。 その先に、何が待っているのかもわからないまま。 ------------------------------ ここまで読んでいただきありがとうございます。 他にも多数の試し読みをご用意しております! 少しでも気に入った作品あれば、続きのご購入をご検討くださると幸いです! 今後とも応援よろしくお願いいたします。
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