【PDF】クラフトビールと地ビール、流通と地域について
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本書は2021年6月6日に行われたCOMITIA136にて発表したものです。 クラフトビールは地ビールと同義であると言われることがあるけれど、果たしてそれは本当に同じなのだろうか。そして、地ビールとはそもそも何だったのか。2012年から2014年にかけて言葉としてクラフトビールの認知が広まってきた時、何を捨てて何を得て地ビールはクラフトビールへと生まれ変わったのだろうか。そんな疑問が私の中にずっとありました。 本書では上記疑問点を踏まえつつ、作られる場と消費される場の関係を中心に調べて書きました。自分自身にとって新しい発見もあって苦しみながらも取り組んで良かったと思う反面、統計的クラフトビールが定義されていないおかげで全くデータがなくて何一つ分からない事柄にたくさんぶつかりました。それを補強するべく、私自身が実際に見聞きしたこと、公開されているデータを基に出来る限りそのぼんやりとした姿に輪郭を与えようと努めたのが本書です。その結果、日本のクラフトビールは地産地消ではなくて地産都消、もしくは都産都消に近く、もはや地ビール的ではないのではないのか、という結論に達しました。これは21世紀における生産・消費の構造を踏まえ、クラフトビールで地方は活性化するのかを考える試みでもあり、多くの方と議論したい論点です。 ここから議論を発展させると、都市型ブルワリーとしてのブルーパブの意義も検討することが出来るでしょう。また、日本において県や地方を単位とした認識方法の妥当性についても自明のものとせずに検討し直すことが求められると考えます。そういった議論への端緒として本書が位置づけられるならば著者として非常に嬉しいです。 なお、執筆時は新型コロナウイルス蔓延の前であり、その後新規醸造所の増加、缶ビールへのシフトもあり、2023年の状況と異なる点は多々あります。その点を考慮した上でお読み頂きたく存じます。 拙い文章ではありますが、本書がクラフトビールという現象を考えるきっかけとなってくれたらこの上ない幸せです。 目 次 クラフトビールと地ビール、流通と地域について 1 1.仕事で地方に行って感じたこと 1 2.アムステルダムでの思い出 1 3.クラフトビールと地ビールは同じなのだろうか 3 4.JBAの「クラフトビール」(地ビール)の定義 3 5.ビールにおける家庭用と業務用 4 6.ブルワリーとクラフトビール取り扱い店舗の分布 7 7.クラフトビールは高いから 11 8.商工リサーチのアンケート結果とTOYODA BEERの事例 12 9.アメリカにおけるローカルを考える 14 10.売上とエンゲージメント 15 11.現代クラフトビールは地ビール的ではないと思う 16 あとがき 19 2021年6月6日開催COMITIAにて初版発行。