僕は、泣かない 4
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San Antomioから傷付いた躯と心を引き摺り2人はある老人と知り合う。老人はSouth Carolina で綿花畑を一人で営んでいた2人はそんな老人の手伝いをする様になったのだが……シリーズ中で一番安心して読める、筈 番外編――直江20歳高耶5歳、初めてのドライヴ、そんな話 1C 84p Souht(サウス) Carolina(カロライナ) Sta(州). Mt(アパ).Appalachia(ラチア山脈)が横たわるその裾野、広大な綿花畑はあった。 Georgia(ジョージア) Sta(州). Savannah(サヴンナ) R(川)v.近く、R230を横目で見る土地は静かでまるで、時が止まった感覚に陥る。 San(サン) Antonio(アントニオ)から逃れて辿り着いた時は、直江も高耶も疲れ切っていた。救いはパトリシアから受け取った$(金)で、それでも焦燥は深く根付いてたのだ。 死んだセス、高耶を助け、息絶えた青年 4ヶ月経った今でも、高耶は忘れていない。 口に出したりはしないが、直江には少年の疵が分かり過ぎる程分かっていた。ガルシアに打ち抜かれた高耶の足は、パトリシアの知り合いの医師に緊急に診せたのが良かったのか、貫通していた為後遺症は見当たらない。しかし白い白い肌には、痛々しい疵跡が色濃く残ってしまった。 高耶自身は全く気にしていないのだが、直江はあの光景と共に永遠に胸に残るだろう。 ―直江ッ!― 悲痛な叫び 男を助け様と飛び出した少年が目の前で、銃弾に倒れた映像 ―夢で見る、悪夢― 荒い息と共に夜中に飛び起き、隣に眠る高耶を確認するのだ。そして少年を起こさなかった事にホッとし、眠れない夜を過ごす。そんな背景を抱える2人に、この地は優し過ぎた。 暖かく〟街〝には無い温度。 目の前の老人に目を向け、それが高耶に向いているのを確認する。老人の眸には厳しい光があり、その奥底には確かに慈悲の色があった。この流れる様な穏やかな生活は、直江にとって現実味の無い、まるで夢の中の出来事を思わせる。 「美味いか?」 ムッとした声と顔は機嫌が決して悪いものでは無い事も、この短く―――長い時間の中で高耶は良く分かっていた。 「うん」 口の周りにパン屑を付けた高耶が顔を上げると、皺だらけの手が伸びてきて払ってやる。その少し乱暴な動作に小さな躯は身じろいだが、余り動かない表情からは少年が嫌がっていない事が伺えた。 「直江」 「ん?」 小さ目のスクエアな木製のテーブルでは、老人の両脇に高耶と直江が座っている。直江は正面に座る高耶を見ながら答えると、老人――――ローガンはフォークでマッシュポテトを掬いながら言った。 「明日わしはAugusta(オーガスタ)まで出かけてくる、スプリンクラーの調子がおかしいから様子を見といてくれ」 「分かった」 そのまま再び食事は無言で始まりしかし、そこには不思議と暖かいものだけが流れている。 カチャカチャ 余りフォーク使いの上手くない高耶が時折立てる音だけが食卓を支配し、直江は4ヶ月前の出来事を思い出していた。