🌺俺んち…この先!/井上軟太郎【キャンバスF6号】🌺
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岐阜県合掌村。その美しい風景の中に、一人の少年が佇んでいた。彼の名は、航(わたる)。都会からこの村に引っ越してきたばかりで、まだ周りの環境になじむことができずにいた。 航は、両親の仕事の関係で、幼い頃から転校を繰り返してきた。どこに行っても馴染めず、いつも孤独を感じていた。だから、今回の引っ越しにも、期待よりも不安の方が大きかった。 村の子供たちは、みんな仲が良く、航はいつも一人ぼっち。放課後、公園で遊ぶ子供たちの賑やかな笑い声が、航の耳に突き刺さる。家路につく道すがら、航はため息をつき、両親に「なんでこんなとこに引っ越してきたんだ…」と心の中で呟く。 そんなある日、航は学校の帰り道に、小さな祠を見つけた。祠の隣には、一本の大きな木が立っていた。木の下には、小さなベンチがあり、航はそこに腰を下ろした。 静かな森の中で、風だけがそっと木々を揺らし、鳥のさえずりが聞こえる。都会の喧騒とは全く異なる、静かで穏やかな時間が流れていた。航は、今まで味わったことのない心地よさを感じ、心が落ち着いていく。 そのとき…航は祠の奥から、かすかな光に気がついた。近づいてみると、祠の奥には小さな洞窟のようなものがあり、其処から優しい光が漏れていた。 好奇心から、航は洞窟の中に入ってみることにした。洞窟の中は、思ったよりも広く、奥には小さな祭壇があった。祭壇の上には、小さな木彫りの狐が置かれていた。 狐の目は、まるで生きているように光っていた。航は、狐を見つめながら、心の中で「何か願い事をすれば、叶えてくれるのかな?」と思った。 その時、航は、狐から不思議な言葉が聞こえた気がした。 「迷いが在るなら、何時でもここに来なさい。きっと…答えが見つかるでしょう。」 航は、狐の言葉を信じ、毎日、その祠を訪れるようになった。そして、祠で過ごす時間は、航にとって、都会では味わえなかった安らぎと、自分自身を見つめ直す大切な時間になっていった。 航は、村の子供たちと接する機会が増え、少しずつではあるが、心が開けていった。子供たちと過ごす時間は、航にとって、喜びと希望を与えてくれた。 ある日、村の子供たちが航を、村の奥にある「秘密の場所」へ連れて行くことにした。子供たちは、航に「絶対に言っちゃダメだよ!」と念を押した。 子供たちが案内してくれたのは、村の奥にある、ひっそりと佇む古いあばら家だった。家の周りには、鮮やかな花々が咲き乱れ、まるで秘密の花園のようだった。 子供たちは、航を家の中へ招き入れると、大きなテーブルの上には、美味しそうな料理が並んでいた。子供たちは、航に「今日は、みんなでご飯を食べよう!」と笑顔で言った。 航は、子供たちの優しさに感動し、涙がこみ上げてきた。 「ありがとう…。」航は、子供たちに感謝の言葉を述べた。 子供たちは「どういたしまして!」と、航の頭を撫でてくれた。 その日から、航は村の子供たちと、毎日一緒に過ごすようになった。航は、子供たちと過ごす中で、初めて「仲間」という存在の大切さに気づいた。 そして、航は、都会で感じていた孤独感を克服し、この村で新しい生活を始めることを決意した。 ある日、航は、村の老人から、この村の伝説について聞いた。 昔、この村には、狐の化身である「狐火」が住んでいたという。狐火は、村人たちに様々な恩恵を与え、村は繁栄していた。しかし、ある日、狐火は姿を消し、村は衰退してしまったという。 老人から話を聞いた航は、狐火について、もっと知りたいと思うようになった。航は、村の人々に狐火に関する情報を集め、古文書や伝説を調べ始めた。 やがて、航は狐火が、村の人々の心を一つにし、村を豊かにするために生きていたことを知った。そして、狐火は、村人たちの心の支えであり、希望であったことを知った。 航は、狐火が、村の人々のために命をかけて守り続けたこの村を、これからも大切に守っていきたいと強く思った。 航は、村の人々と一緒に、村を活性化させるための活動を始めた。都会で培った知識や技術を生かし、村の特産品をPRしたり、観光客向けのイベントを企画したりした。 航の努力によって、村は少しずつ活気を取り戻し始めた。 ある日、航は村の子供たちと、村の奥にある「秘密の場所」を訪れた。 「航くん…この先!」 子供たちは、航にそう言い、古い家の奥へ進んでいった。 航は、子供たちについて、古い家の奥へと進んでいく。 家の中に入ると、そこには、かつて狐火が住んでいたという、小さな祠があった。 航は、祠の前に立ち、狐火に感謝の気持ちを伝えた。 「狐火さん、ありがとうございます。あなたは、この村の人々の心を一つにし、村を豊かにするために生きてきたのですね。僕は、あなたの意志を継ぎ…この村をこれからも守っていきます。」 航の言葉が、祠の中に響き渡る。 航は、祠から、優しい光を感じた。 航は、子供たちの笑顔を見つめながら、この村で生きていくことを決意した。 そして、航は、狐火の意志を継ぎ、この村をこれからも守り続けることを誓った。 「俺んち…この先!」 こうして…航は、この村で、新たな人生を歩み始めるのであった。 井上軟太郎
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