【PDF】「ビールのスタイルと多様性、感性と言葉
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クラフトビールと呼ばれるものが世界的に人気になっていて、それを理解するために「ビアスタイル」が利用されています。「初心者が飲むべきビアスタイル5種」という感じのタイトルが付いた記事をご覧になった方も少なくないでしょう。ビアスタイルなるものが存在することは自明であり、それを前提に議論が進んでいるように感じられますが、そもそもビアスタイルとは一体何なのかあまり説明されません。また、ビアスタイルの豊富さを根拠にクラフトビールが多様であることを主張する方も見受けられますが、多数あると誰がどう数えたのかも説明されません。ビアスタイルという概念がいつの間にか独り歩きししてしまっているような気がしてならないのです。 長くビールに携わる中で私はビアスタイルというものは有用なものであると認めつつも、その根本にあるもの、すなわち感性や言葉、もっと言えば一人ひとりの人間に注目して理解すべきだと考えるようになりました。その種類の多さよりも、ビアスタイルを成立させる原因を知ることの方が重要だと思うのです。その意味で、本書はビアスタイルの豊富さそれ自体がクラフトビールの多様性を表すものではないことを示し、現在のシーンでの使⽤法とあるべき姿、尊重すべきものを考える論考です。 この先には人間の主体性に関する議論も待っています。アメリカからの外来文化としてクラフトビールを接種した日本人にとっては避けては通れぬ課題になってくることでしょう。ビアスタイルとは何か、どう扱うべきものであるかを考えつつ、本書がクラフトビールを通じて主体的に動く個人と社会やコミュニティの相互作用についても思うきっかけになれば嬉しいです。 目 次 第1章 ビールの多様性はビアスタイルの豊富さなのか 1.「大手は単一で、クラフトは多様である」という図式について 2.そもそもビアスタイルが100種類以上あるという根拠は何か? 第2章 ビアスタイルガイドラインとビアスタイルについて 1.ビアスタイルガイドラインとは何なのか? BJCPを例に 2.BJCPと Brewers Associationに見られる考え方の違い 3.ビアスタイルガイドラインに載っていないビアスタイル 第3章 ビアスタイルは帰納的に作られる 1.歴史の萌芽はいつも目の前にあるけれど気が付かない 2.一人ひとりの感覚や言葉の重要性 第4章 ビアスタイルガイドラインの本来の使い方と誤用 1.ビアスタイルガイドラインの本来の意図と懸念される誤用 2.品評会で審査されるポイントについて 3.因果関係を逆転させ、結果を根拠にしているビール 4.ビアスタイルの学習を勧める人たちへの疑問 5.意図的にその土地固有のビアスタイルを構築することは出来ない 最後に 多様なのは感性と言葉である 2021年5月31日開催COMIC1にて初版発行。