夜が灯る五分前 新装版
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☆140字小説集 第1弾 夜が灯る五分前、それは夢と現実を繋ぐわずかな時間だ。後悔も、未練も、朝に融かしてしまいたくなる。それだって、今と向き合うこの真夜中を、明けるのが惜しいほど愛しく思う。感傷、コメディ、恋愛、ホラー、青春など7年半前に頒布した初の140字小説集のリメイク。No.001‐150に書き下ろし6作を加えた156作を収録しています。 noteで収録作品が全て無料で読めます! https://note.com/akisuke0825/n/nc7af80865eed 【文庫版限定特典】 ・大幅な加筆修正 ・作品への一言追加 ・書き下ろし6作追加 ・新しい素敵な表紙 ・雰囲気を重視した掲載順変更 も、楽しめるのでぜひお手に取ってみてください! 【「ああああ」】 クリアできなかった古いRPGをまた始めてみた。主人公の名前が「ああああ」と付けられている辺り、自分の適当さに苦笑してしまう。せめて世界を救えていたのならば、自分と似たこの間抜けな主人公も報われていたのだろう。ごめんな「ああああ」世界もお前も、救ってやれなくて。 【落花生】 落花生という響きが好きだった。漢字を分解してみると、その言葉の綺麗さに気付く。落ちる。花。生きる。生命の尊さを感じた。飛び降り自殺を図った友人は醜い姿になってしまったけれど。だけど、私は生きている。彼女の分まで、私は生きようと思った。落ちる。花。それでも、生きる。 【幸福許容量】 世界全体の幸福許容量は決まっているらしい。命が生まれたり、亡くなったり、幸せになったり、不幸になったり、泣いたり、笑ったり。恋したり、失ったり。そうやって世界はバランスを取っている。私は今、不幸だ。誰が幸せになったのだろう。そっと、まだ知らぬ誰かの幸せを願った。 【無線通心】 「お掛けになった心は、現在、使われておりません。相手の心を御確認の上、もう一度、心を御繋ぎ下さい。繰り返します。お掛けになった心は、現在、使われておりません。相手の心を御確認の上、もう一度、心を御繋ぎ下さい。繰り返します。お掛けになった心は、現在。使われておりません――」 【ハッピーポイント】 ポイントカードの幸福量が一万ハッピーも貯まった。小さな幸せを見つけては貯め込んで、やっとここまで増やすことができた。この幸福ポイントを使って男の子に告白してみる。「好きです」と言うと、男の子はカードを見て哀しそうに呟いた。「ごめんね。有効期限が切れてるみたいだ」 【月ウサギ】 昔々、一羽のウサギが月まで跳ぼうと、長い耳をパタパタ揺らしていました。さみしいウサギ、月まで跳んで、誰かに見ていて欲しいから。ある満月の夜、ウサギはついに月まで跳びました。力尽きたウサギは命を失いましたが、さみしくはありません。今もほら、みんなが君を見ているから。 【文字戦争】 ひらがな軍とカタカナ軍が喧嘩をしていました。ひらがな軍は「『め』と『ぬ』の方がややこしい」と言い、カタカナ軍は「『シ』と『ツ』の方がややこしい」と張り合いました。そこに登場した漢字軍。「いいや。『猫』と『描』の方がややこしい」と対抗します。今日の勝負、引き分け。 【鳴き声クイズ】 「『メ〜』これが羊の鳴き声です」「はい」「『メェ〜』これがヤギの鳴き声です」「はい」「わかりましたか?」「なんとなく」「では、次は上級問題です。『ンメェ〜』これはなんの声でしょうか?」「……ヤギ、ですか?」「いいえ。これは美味しい物を食べたおばあちゃんの声です」 【息抜き】 彼女が「だす!」と言ってくる。「なんなの?」と聞くと「息抜き」とだけ答える。その後も彼女は「だす!」と言いながら笑顔を向けてくる。そんなことで息抜きになるのかなと思って、しばらく考え込んでいると息抜きの意味に気付く。「だす!」と言われる度に顔が真っ赤になった。 【不良和音】 その不良は指の骨を鳴らすと、不思議なことに音階を生み出します。パキ、ポキと鳴らすと、今日は気分が良いのか、ラシ、シドと高音が鳴ります。調子が良いときにはカエルの合唱を鳴らします。敵の不良もそのメロディーを聞くと戦意喪失します。街は今日も不良のおかげで平和でした。

