坊さんと貧乏神と愉快な仲間たち 室町時代編
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応仁の乱によって都は焼け落ち、武家も公家も寺社も、かつての権威を失っていた。 人々は生きるために何かを掴もうとし、同時に「何を信じればよいのか」を見失っていた。 その荒廃した世に、一人の名もなき坊が現れる。 彼は教えを説かず、救いも約束せず、ただ托鉢をしながら各地を歩いていた。 その坊のそばには、いつの頃からか人知れず貧乏神が寄り添っている。 貧乏神は人間から富や地位、誇りを奪う存在として恐れられていたが、実のところ彼が奪うのは「人が過剰に抱え込んだもの」だった。 坊と貧乏神が辿る先々で、さまざまな人間が彼らと関わる。 主君を失い、忠義の拠り所をなくした元武士。 富と権力を集めながら、仏の名の下に人を選別する大寺院の僧正。 土地も家族も失い、流民として生きる幼い娘。 金を力に変え、時代を乗りこなそうとする商人たち。 貧乏神は彼らから、金や地位、信仰、誇りといった「支え」を容赦なく剥ぎ取っていく。 人々は嘆き、怒り、坊に救いを求めるが、坊は決して答えを与えない。 ただ一言の問いを残し、人が自ら選ぶのを待つ。 やがて人々は気づき始める。 失ったからこそ見えたもの、持たなかったからこそ守れたものがあることに。 一方で、すべてを失うことを恐れ、さらに奪い合いへ向かう者も現れる。 都が再び動き出す頃、坊と貧乏神は人々の前から静かに姿を消す。 彼らは何も救わず、何も変えなかったように見えた。 だが、彼らと出会った人間たちの中には、もう二度と以前の価値観には戻れない者がいた。 この物語は、神や仏が人を救う話ではない。 混乱の室町という時代を生きる人間が、 「何を持たず、何を選んで生きるのか」を問われ続ける、静かで壮大な寓話である。
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