Re-ClaM 第1号
- ¥ 500
クラシックミステリ翻訳の歴史についてある程度承知している方であれば、伝説の同人誌「ROM」のことも当然ご存知でしょう。現在のクラシックミステリ業界の論客を多く育み、また様々な企画の出発点となってきたこの同人誌は、144巻+2巻をもってついに40年の歴史に幕を下ろしました。 その精神を受け継ぐ形で創刊されるのが、今回の「Re-ClaM」です。「Re-ClaM」は「Rediscovery of Classic Mystery」の略で、それとなく「ROM」(Revisit Old Mysteries)を感じさせる名称になっています。「原書レビューを中心に」という点は(いまのところ)変わりませんが、よりラディカルによりバイオレンスによりアナーキーに私がやりたいことをやる冊子になっていくことでしょう。 その第一号では、先年『探偵小説の黄金時代』(2015、森英俊・白須清美訳、国書刊行会)が翻訳されて話題沸騰中のマーティン・エドワーズを特集します。 そもそも、本書が翻訳されるまで(あるいはエドガー賞他各賞を受賞するまで)日本のほとんどのミステリファンがエドワーズのことを知らなかったのがおかしいんです。兼業作家でありながら、毎年一冊ずつ欠かさず長編を出し、アンソロジーを中心に短編を60編ほど発表し、(CWAの委託で)自分でもアンソロジーを編纂し、大英図書館と協力してクラシックミステリを復刻し……と着々と積み重ねた実績により、ついにCWAの会長とディテクション・クラブの会長を兼任するに至った……こんな作家、史上他にいません。なんで誰も彼のことを知らなかったのか?なんで誰も紹介しなかったのか? 「こんなの絶対おかしいよ」と吠えても過去は覆りません。今ここにいない誰かに責任を問うても意味はありません。ならばせめて今からでもきちんと紹介したい、という趣旨で始まった特集ですが、存外しっかりしたものになってしまいました。当初はペラペラの本になる予定だったのですが、特集パートだけで60ページ越えというね……第二号以降が貧弱に見えないか、今から心配です。 以下目次。 【特集】知られざるマーティン・エドワーズ マーティン・エドワーズ氏への十の質問 マーティン・エドワーズ氏ご紹介(三門優祐) マーティン・エドワーズ氏の印象(芦辺拓) 『探偵小説の黄金時代』 もう一つの訳者あとがき(白須清美) いざ、謎解きの旅へ ~『探偵小説の黄金時代』訳者解題(森英俊) [レビュー] Martin Edwards Yesterday's Papers (1994)(三門優祐) [レビュー] Martin Edwards Gallows Court (2018)(三門優祐) [レビュー] Martin Edwards The Story of Classic Crime in 100 Books (2017)(三門優祐) マーティン・エドワーズ作品リスト [レビュー] Lois Austen-Leigh The Incredible Crime (1931)(小林晋) [レビュー] J. Jefferson Farjeon Seven Dead (1939) (小林晋) [レビュー] John Bude The Cheltenham Square Murder (1937) (小林晋) ブリティッシュ・ライブラリー・クライム・クラシックス 全リスト 英米クラシックミステリ復刻最新事情(三門優祐) 【連載&寄稿】 小野家由佳のCHEEP BEER -第1回 マックス・アラン・コリンズ Bait Money (1981)(小野家由佳) 不思議な既視感~M・D・ポースト「神のみわざ」を読んで(井戸本也玄) 偽・黒後家蜘蛛の会「バークリーとチョコレート講座」(kashiba@猟奇の鉄人) 「ヒラヤマ探偵文庫」について(平山雄一) 史上初のインタビュー(一問一答のメールインタビューなのが残念)、プロ作家によるエッセイ、『探偵小説の黄金時代』訳者コンビによる「もう一つのあとがき」、原書レビュー7本(うち2本がエドワーズの長編)、あとあまりの作業量に編集氏が死んだリスト集ともりもりの特集に加えて、ヤングもベテランも入り乱れる寄稿ページの贅沢なこと。ははは、やったもん勝ちですわ。とまれ、『探偵小説の黄金時代』を読んだ読者に向けての副読本的な位置づけで作っておりますので、濃いクラシックミステリファンの方からよく知らないけどなんとなく気になるというフレッシュな方までぜひお求めください。 【物理版との相違点】 この電子版「Re-ClaM」第1号は、2018年11月、第28回文学フリマ東京で頒布された「Re-ClaM」と内容が異なります。紙版に収録されていたマーティン・エドワーズ The Story of Classic Crime in 100 Books "Introduction"は、エドワーズ氏との契約の関係で、本電子版には収録しておりません。あらかじめご容赦ください。