口紅がもたらす淡く静かな短篇小説
お嬢様育ちの風花と彼女の家の運転手の息子辰樹、二人の関係を一体どう言い表したらいいだろう。
以下本文より抜粋
……辰樹は、彼はこれを何処で手に入れたのでしょうか。それ以前に、これがそういう類のものであるということは知っていたのでしょうか。そうして知りながら平然と手渡すような人だったのでしょうか。……わかりません。
鉱石のようなそれは恐る恐る触れた赤い唇に優しく沈み込むと、憂鬱な熱を引き取り春風の色を差しました。
振り向きざま、風花は咄嗟にそれを帯の内側へと隠します。