雷竜無惨(ジオラマベース付)アロサウルス大小・ブロントサウルス
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昭和恐竜図鑑定番の構図を意識して、ブロントサウルスを食い散らかすアロサウルスを手前に、奥には小さく捕食場面を配置。餌食となる恐竜は内臓も表現。 縦横奥行きはジオラマベース込みでざっくり25~30センチ程度。 恐竜はアルミ線などの芯材に石粉粘土を中心に樹脂粘土なども使用して造型、アクリル塗料で塗装。 ジオラマベースは各種粘土と、バークチップなどの自然素材やフェイクグリーンなども使用。 ガレージキットではなく一点物の彩色済み粘土造型です。
ネンドソー的恐竜名鑑◇アロサウルス
◇アロサウルス 全長8~10メートル/体重2~3トン/ジュラ紀後期 名前の由来は「異なる」サウルス(トカゲ)だが、何が何と異なるのかはよくわからない。それまで見つかっていた肉食恐竜たちとは明らかに違って巨体で凶暴さを想像させる特徴を多く持っていた、ということだろうか。小種名はフラギリスで、これはラテン語で「脆い」の意。発掘された脊椎骨の中空構造からの命名らしいが、これは大型ケモノ竜(獣脚類)には普通に見られる特徴なので、言いがかりもはなはだしい。 ジュラ紀の北米大陸で大繁栄した肉食恐竜で、1877年にアメリカ古生物学会の草分け的なオスニエル・チャールズ・マーシュ博士によって記載命名されて以来、ティラノサウルスが発見されるまでは学会、業界の花形であり、30年遅れで満を持して登場した(発掘された)ティラノサウルスにトップスターの座を明け渡しながらも、それでもかの暴君竜に次いで有名で人気もあり研究も進んでいる。 頭骨の眼孔上部には涙骨が延長した一組の角があり、鼻骨の先端から角にかけて一組の低いひだ状の張り出しがあった。ティラノサウルスよりもはっきりくっきりそそり立つこの角(?)はケラチンで覆われていたと考えられ、目に対する日除けや防護の役に立ち、またニワトリのトサカのごとく力を誇示する装飾でもあったと考えられている。 ティラノサウルスと比べると確かに華奢と言える頭骨と歯(というか牙)で、推測される筋肉の付き具合からも咬む力は強いとは言えず、ライオンにも劣るという研究もある。それで捕食活動に支障はないのかと心配してしまうが、顎ではなく首の筋肉が大変発達し、狩りの際は頭を振りかぶって上顎をハンマーのように相手に叩きつけて切り裂き、ショックと出血多量で殺したというから、それはそれで恐ろしい。 アロサウルスの凶暴性を示す化石証拠としては、逃げるブロントサウルス(アパトサウルス)を追跡するアロサウルス(と思われる)足跡の化石が発見されている。執拗に追いすがる様子からアロサウルスがハンターであったことがうかがえる。また、ステゴサウルスの背中に並ぶ剣(というか背びれ)の一枚がU字型に深く欠けた化石が発掘されており、その欠損の形と大きさにちょうどアロサウルスの鼻面がぴったりはまる。つまりステゴサウルスの背びれにアロサウルスが咬みついて、食い割り食いちぎったのだ。一方でこれもまた別の化石だが、アロサウルスの脊椎骨、腰の先というか尻尾の付け根あたりに、ぽっかり丸く穴が開いているものがある。これはステゴサウルスの尻尾の先にあるトゲ(スパイク)が突き刺さった痕と言われている。ホントかよ。スゴイなそれ。しかもその穴には治癒痕もあるというから、背骨を貫かれてもなお生き残ったわけで、たいした生命力である。 ティラノサウルス同様、アロサウルスの化石も満身創痍のものが多く、1991年にワイオミング州で発掘されたビックアルの愛称で呼ばれる若いアロサウルスの化石には、骨折や、怪我が元の感染症(骨髄炎)の痕跡が19箇所にも及ぶという。カミナリ竜(竜脚類)は百年生きたといわれるが、アロサウルスなどのケモノ竜(獣脚類)はせいぜい長生きしても30歳寿命だったとされる。激しく生き、生きている間は戦い続け、そして激しく死んだのだろう。 1960年からはじまった有名なユタ州クリーブランドでの発掘調査では、46体もの化石が同時に発掘され、そこからの類推で群れを作っていたとの説もあるが、協力して狩りをしたというよりは一斉に襲い掛かって、仕留めた後は奪い合って食う、程度のものであったようだ。複数の化石から共食いの痕跡が見つかることからもアロサウルスが社会性を持っていたとする説は疑問視されている。 さておき、このクリーブランドは謎の多い発掘地で、剣竜ステゴサウルスやカミナリ竜(竜脚類)カマラサウルスも発掘されているがそれらはごく少数で、掘れば掘るほどアロサウルスばかり出てくるらしい。なぜ捕食者ばかりがそんなに大集合するのか。群れを作らないとすれば余計にわけがわからん。いや、もし本当に46匹もの大所帯の群を日常的に作って走り回っていたとしたらそれほど恐ろしい光景もないだろうが。あと一匹足せば忠臣蔵じゃないか。 クリーブランドがたまたま恐竜の死体が流れ着く場所だったのだとしても、アロサウルスばかりなのはおかしい。別の研究論文では、干上がった湖にステゴやらカマラやらが泥に足を取られて動けなくなって死んでいるのをアロサウルスが食べようとやって来て自分も泥に足を取られて動けなくなって死んで、その死体を食べようとまた別のアロサウスがやって来て泥に足を取られて動けなくなって死んで、その死体を食べようとしてまた別のアロサウルスが……とする説もあるが、それで46体も次から次へと来ては死に来ては死にするものだろうか。どんな四七(マイナス1)士だよ。全員討ち死にに終わる忠臣蔵みたいで、面白過ぎて噓臭い。 あ、ここで美談をひとつ。アロサウルスは、実は我が国日本において、初めて全身骨格が一般に公開展示された恐竜なのだ。戦前から戦中戦後を通してアメリカでのホテル経営で成功した日系人の小川勇吉さんという人がいて、その小川さんが、恐竜が好きで好きで仕方なくて、また故郷日本のことも好きで好きで仕方なくて、日本の子供たちに恐竜化石を見せたいとの謎の使命感に燃え、このクリーブランド発掘調査に大金を援助してその見返りとして、特にカッコいいやつをひとつ日本に送ってくれ、と頼み込んだらしい。そのためにホテルチェーンを売り払ったという話もあり、美談を超えて執念を感じる。戦時下の敵国での商売がどれほど大変であったかは想像に難くないが、それで得た財産を恐竜に注ぎ込んで散財とは、小川さんの人生とは何だったんだろう。まさに恐竜マニアの鑑であり、俺も見習いたいものだ(いや、やっぱりやめとこう)。 約束通り無事日本に送られ、1964年に日本全国を巡回したアロサウルスの全身骨格化石は、まさにこの、流され集まったか泥に足を取られて死んだかした、クリーブランド忠臣蔵四七(マイナス1)士のうちのひとりであった。ああ、残念。俺はまだ生まれておらずこの巡回には間に合わなかった。でも大丈夫。このヤスベエだかクラノスケだかの化石標本は今でも上野の国立科学博物館に鎮座ましましている。長らく玄関を入って正面ホールにでんと据えられていたものだが、十年のお蔵入りを経て、今は地球館に常設展示されている。その際に最新学説に合わせて尻尾を接地させた仁王立ちから胴体を地面に平行にする体勢に組み替えられているのはちょっと残念だが。 さて、このアロサウルス。北米以外でもヨーロッパやアフリカ大陸でも同種と思われる化石が発掘されており、広く繁栄していたらしい。まだ世界中の全大陸が地続きであったパンゲア超大陸の頃ジュラ紀初期に発生したからだろう。その後、南北(ローラシア大陸とゴンドワナ大陸)に分かれたわけだが、大陸が分裂すれば海流が生じ気候の大変動が起こる。特に北半球で寒冷化し、四季が生じて、植物相が変化する。シダソテツ類から進化して、針葉樹、広葉樹、そしてついに顕花植物の時代になったのだ。これにはまずカミナリ竜(竜脚類)がついて行けなかった。ディプロドクスもブラキオサウルスもカマラサウルスもブロントサウルス(アパトサウルス)も、進化した植物の葉を消化できずに絶滅したのだ。地面近くに生えていた柔らかいシダを主食にしていた(カミナリ竜の糞食をしていたという説もある)ステゴサウルスも絶滅する。さあ、大変だ。アロサウルスは食べる相手がいなくなってやっぱりほとんど絶滅してしまったのであった。そして白亜紀も深まって再び北半球が温暖化に転じたタイミングで、進化植物を食える歯を発達させたハドロサウルスたちカモノハシ竜と、ご存知トリケラトプスたち角竜、ステゴサウルスの近縁から進化したアンキロサウルスたち鎧竜が繁栄する。そしてそれを食いに進化してきたのが誰あろう、ティラノサウルス類であった。アロサウルスの全盛時代はそのようにして終焉を迎える。小種名のフラギリス(脆さ)とは王座のことであったか。 だが、南半球ゴンドワナ大陸では少々事情が違う。史上最大生物として名高い南米のアルゼンチノサウルスに代表される、カミナリ竜(竜脚類)の末裔たるティタノサウルス類が繁栄を続けた。アロサウルスも進化して生き残る。白亜紀に栄えたギガノトサウルス、マプサウルスや、アフリカのカルカロドントサウルスなどは、アロサウルスの近縁種だと考えられている。南北の大陸が地続きにならなかったことがアロサウルスに幸いした。例えば、北半球で進化しようとしたアロサウルスの近縁種、シアッツなどは台頭するティラノサウルス類との競合に負けて、白亜紀末の大絶滅を待たずにさっさと駆逐されている。 また、さらに孤立した南極大陸では、白亜紀の最後期まで、アロサウルスの末裔が生き残っていたという話もある。さすがに寒冷地であり捕食対象になる植物食恐竜も少なく(その代わり天敵も競合相手もいないので)極端に小型化、矮小化して細々と生きながらえていたらしい。ポーラアロサウルスと呼ばれているが、亜種扱いのようだ。図鑑に載ることもほとんどなく、ティラノサウルスに王座を奪われて落ちぶれた姿が哀れを誘う。 とは言え、ポーラ(極地)と聞けば連想するのが、円谷特撮が炸裂する日米合作映画「最後の恐竜ポーラボーラ」(1977年公開、後年「極底探検船ポーラボーラ」に改題されてソフト化)だが、劇中でティラノサウルスと呼ばれていたあの恐竜は実はアロサウルスで、白亜紀どころか現代まで生き残っていた、ということなら楽しいのにな。 映画「ジュラシックパーク」シリーズでも「ジュラシックワールド 炎の王国」(2018年公開)で火山噴火から逃げる主人公たちに通りすがるだけのほんのチョイ役出演しただけで、一度もスポットが当たらない。と、思っていたら、スピンオフ作品として宣伝用にユーチューブにアップされた10分の短編「~バトルアットビッグロック」(2019年公開)で主役を張っていたのでちょっとうれしかったぞ。