小説「故郷をたずねて」(第一部)
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艦隊これくしょん 同人小説 「故郷(くに)をたずねて」(敷波&司令官) 初版発行(2022/03/06)「電子の海の観艦式」 ※PDFデータに見開き設定がされており、余白を計算調整しておりますので、Adobeの標準PDFリーダーでも、単行本を読むように見開きでの閲覧が可能です。 [あらすじ] 多くの艦娘は、海軍基地施設以外の世界を、見たことがない。 本土鎮守府であっても外洋の基地でも、それらは全て海軍の軍事施設であるために、空爆に耐えうる分厚く高い壁で隔離されている。転属を繰り返しても、常にその壁の中でだけ生活をしてきた艦娘は、日本の本土で、一般的な日本国民が生活している世界を、見たことがない。 外洋の鎮守府、特命南海第11鎮守府にて、司令官は手続きのために佐世保鎮守府に向かってから、そのまま横須賀鎮守府へ移動しそちらでも手続きをしてしまおうという予定を立てていた。海軍の全てを統括する本土鎮守府は常に忙しい。手続きには早めの予約が必要であり、数ヶ月前に予約しても日時は完全に自由には選べない。 結果、佐世保での手続きから横須賀での手続きまでに間が開いてしまい、日本に一週間の滞在、そのうち四日間は完全に休日となった。 手続きのために、秘書艦が本土鎮守府まで同伴することはまれにある。しかし今回の滞在に対して付随してきたのは「施設外移動及び滞在に対しての秘書艦同伴許可」であった。 まずお目に掛かることがない珍しい許可である。「軍基地施設以外の一般区域を移動するのと宿泊滞在するのに秘書艦を同伴させてよい」という許可である。 筆頭初期艦として司令部に登録されており、この権利を行使できるのは、第一秘書艦である敷波のみ。敷波は、司令官からこの際に日本旅行をしてみないかと誘われる。 敷波は、横須賀鎮守府で生まれ、舞鶴、呉と転属したものの、壁の向こう側を見ることはなく、訓練中海上から見えるだけの海際だけを見たことがあるだけの、ごく一般的な艦娘である。 彼女は、なくなってしまった記憶の中にある、初めての日本を見る。