ツキノ精神科パロ2
- ¥ 1,500
前作「ツキノ精神科パロ」の続編です。基本的には前作を読んでいただいた方がわかりやすいかと思いますが、志季×里津花要素で気になったという方は今作だけでも大丈夫です。 今回もほーりーが主にプロセラパート担当です。 サンプルは本文からザックリ抜粋したものになります。本当にザックリ。好きなところからとってきました。 ネタバレはあまりしたくない派なので、ネタバレについては3枚目の画像を参考にしていただければ幸いです。 目次 (☆ みどり子 ★ ほーりー) ★プロローグ(始、海、隼、尊) ★第1話 それぞれの朝(郁涙、陽夜、海、隼) ☆第2話 冬の空とベテルギウス(愛、雪) ★第3話 Sweet home(陽夜) ★第4話 立夏の出会い(夜、里津花、陽) ★第5話 Café time(夜、里津花、陽) ★第6話 不穏な電話(夜、里津花 、陽) ☆第7話 ランドスケープ(始、春、海、隼) ★第8話 認めたくないけど(里津花、夜、陽、海) ☆第9話 ブルースター(新葵、春、隼) ★第10話 治療開始(里津花、陽夜、郁、海、隼) ★第11話 ××フレンド(里津花、陽夜、郁、海、隼、志季) ☆第12話 僕らはもうひとりじゃない(恋駆) ★第13話 遠回りの先にあるもの(里津花、志季) ☆第14話 君と、もっと、ずっと(郁涙、恋駆) ★第15話 俺たちなりの愛し方(陽夜、葵) ☆最終話 未完成な明日でも良い(オールキャラ) 目次 (☆ みどり子 ★ ほーりー) ★プロローグ(始、海、隼、尊) side始 早朝、医局ではいつも通りミーティングを行なっていた。夜間救急で来た患者を割り振り、各種委員会からの報告を聞く。全ては順調に筒がなく行われていた。 ……こいつらが遅刻してくるまでは。 ★第1話 それぞれの朝(郁涙、陽夜、海、隼) side郁 頭を軽く撫でて、玄関へ足を向けようとすると控えめに服の裾が掴まれた。 「涙?」 振り返ると、涙がまだ眠そうに目を擦りながらコテっと首を傾げた。 「行ってきますの、ほっぺにチューは?」 「……っ、も〜涙!朝からあんまり可愛いこと言わないでよ」 思わず顔が熱くなり一歩後ずさる。主治医と患者、許されない恋だと、距離を置いていた時期もあった。でも優しい職場の先輩たちのお陰で、俺たちは恋人として順調なスタートを切った。 ★第3話 Sweet home(陽夜) side陽 リビング入るとエプロンをつけた夜がこちらに背を向けてさらに料理を盛り付けていた。今日の夕飯は肉じゃがらしい。 「よ……うわっ!」 ドアの閉まる音で気がついたのか、振り返って声をかけようとしてきた夜を、そのまま後ろから抱きしめる。 「うわわっ、陽!?」 「いいから続けて」 ガチャ、と皿が音を立てたのは一瞬で、すぐに落ち着きを取り戻した夜は「わかった」と作業を再開した。作業で揺れる肩に掴まって、大きく静かに息を吸い込む。1日働いて少し酸っぱい匂いが混ざった、でも紛れもない夜の匂いだ。早番だった夜とは朝昼のタイミングが違ったから、今日は夕飯が初めて一緒に食べる飯だ。 「……陽、運ぶから少し離れて」 「やだ」 「あははっ、今日の陽は甘えん坊だね?」 ★第4話 立夏の出会い(夜、里津花、陽) side夜 でも、そんな陽のことを思えばこそ、余計に同棲はできない。陽は魅力的な人で、今だって職場の後輩ちゃんたちは、陽に声をかけられると嬉しそうに笑っているし、差し入れを持ってくる子だっている。社交辞令だとしても、陽が嬉しそうにそれを食べて女の子を褒める姿、照れている女の子を見ると「ああ、お似合いだなぁ」と思ってしまうのだ。きっと陽の魅力はこれからも増していく。地味な俺とは違って、陽にはこれからもいくらだって結婚できるチャンスがある。だから、陽を俺に縛り付けることはできない。 ★第5話 Café time(夜、里津花、陽) side夜 「やっぱりカッコいい…というか綺麗ですね。モデルさんみたい」 やっぱり装飾はオシャレのためだったと1人納得する。病院も誰かのお見舞いか付き添いだろう。 「ありがとうございます。実はモデルをしてるんだ」 「えっ…あ、すみません!俺、雑誌はあまり観なくて。テレビもニュースくらいしか」 こんなことなら、陽が毎月買ってその辺に放置している雑誌を、ただ片付けるんじゃなくてめくってみるべきだったと後悔する。 「ううん、全然気にしないでください。俺を知らない人の方が俺は気楽に話せるしね。って、ごめんなさい、タメ口になってしまって」 ★第6話 不穏な電話(夜、里津花 、陽) side夜 「もしもし!長月です」 「もしもし、世良里津花です。こんばんは。夜遅くにごめんね」 電波に乗って届いたのはいつも通りの丁寧な言葉遣い。でも、どこか声色に張りがないというか、元気がない気がするのは『電話じゃないと話せない深刻そうな話』が来ることを知っているからだろうか。 「いえ、全然大丈夫です。」 「……じゃあ、さっそく本題に入るけどいいかな」 「はい」 里津花さんに気を使わせないように意識的に明るい声で応答しているけど、無意識にごくりと唾を飲み込んでしまう。 「まず、端的にいうと、最近俺の家に誰かが侵入してるみたいなんだ」 「え……」 ★第8話 認めたくないけど(里津花、夜、陽、海) side夜 俺の夜勤のほうも何事もなく平和に終わり、帰ろうとロッカーに向かう。着替えようとして、里津花さんは大丈夫だっただろうかとふと気になった。スマホをタップすると、陽から連絡が来ていて、その送信時間が午前4時。トークルームを開いて、陽にしては長い文章にざっと目を通すと同時に冷や汗が流れる。 「っ……!」 ★第10話 治療開始(里津花、陽夜、郁、海、隼) 「そうですか。あの、それで今日は面談のつもりで来たんです」 「面談?」 点滴や内服などの薬物治療、管理栄養士介入による食事療法、規則正しい消灯と3色の食事による生活リズムのコントロールなどが入院の主な目的になることが多い。しかし、精神科はそこに心理面談や認知行動療法など独特の治療が入ってくる。 「はい。薬で眠れるようにしたり、仕事を減らしてストレスを軽減することも大切なんですけど、心の病気は根本的なところを正さないと繰り返してしまったり悪化してしまったりするんです。それはなんとなくお分かりになると思うんです」 「そうだね。じゃあ、つまり、お悩み相談会みたいなのをしてくれるってことでいいのかな?」 「はい、大体そういう認識であってます。あとは考え方の癖に気がついたり、無意識に囚われている考えを他者の目から指摘したり……と色々あるんですがそれはまあ、こちら側のことなので。とりあえず、カウンセリングルームに行きましょう」 ★第11話 ××フレンド(里津花、陽夜、郁、海、隼、志季) side夜 「里津花!」 思わず身体を竦めつつ振り返ると、メガネにマスク、帽子から靴まで全身黒コーデの怪しい……いや、怪しいを通り越して熱中症にならないか心配な人が、こちらに向かってすごい勢いで近づいてきている。 「えっ……志季!?」 できれば関わりたくない人だなあ、と反射的に思ってしまったけど、里津花さんが返事をしたってのでは知り合いなのだろう。走りはしないものの、ものすごい圧で来たその人は数メートル離れたところでピタリと止まった。掴み掛かられるかと警戒したものの、その辺の常識は弁えてくれていそうで安堵する。 「お前、どこに行っていたんだ」 (略) 「おい、里津花!」 志季さんが追いかけてこようとアスファルトを蹴る音がしたけど、里津花さんの「ついてこないで!」の一言で足音は止まった。肩越しに振り返ってみると、呆然と立ち尽くす志季さんの姿が見えてなんとなく可哀想になりつつ、今は毎日ランニングをしている里津花さんの走りについて行くので精一杯なのであった。