『亜烈館の幾人(あれつかんのいくにん)』(CoC6版)SPLL:E196745
- ¥ 500
「里帰り、付き合ってもらえない?」 と、友人の阿仁間 銀(あにま ぎん)が申し訳なさそうな顔で言った。訳あって数年ぶりに帰省することになったものの、一人きりであの家に戻るのは耐えがたい。ならば、友人と共に旅行気分で……ということらしい。 ……だが、“旅行”というにはあまりにも過酷な旅だ。なぜなら彼女の実家が建っているのは、観光地はおろか他に民家の一軒もない、名もなき絶海の孤島なのだから。 時は2024年5月17日。 海風に吹かれど凛と建つ亜烈館──かの館で待ち受けるのは何者か? __________ 想定プレイ人数:2~3人 想定プレイ時間:2~3時間 推 奨 技 能:特になし __________ 真面目に不真面目、いたって真剣に書きました。 新しい試みです。宜しくお願いします。
○探索者と友人について
探索者たちには、阿仁間 銀という共通の友人がいる。年齢は25歳。小柄な身体をオーバーサイズのパーカーですっぽりと覆い、誰にでも気さくに話しかける彼女の振る舞いは、南極の調査隊についていくペンギンを思い出させる。好奇心があちこちに向くため、履歴書に書ききれない数の職場を転々としてきたが、本人はあまり気にしていない。カメラが趣味で、暇な日はあちこち歩き回って写真を撮っている。 彼女と出会った理由は何でも構わない。大学や職場が同じだったり共通の趣味があったりなど、少しでも繋がりがあるのならば、彼女は誰にでも気を許す。 今回、銀が里帰りをすることになったのは、父親(阿仁間 共則)に呼び出されたためである。兄弟全員が集められるのは実に10年ぶりのことだが、なぜ今になって連絡を寄越したのかは、皆目見当もつかないらしい。 銀には兄(阿仁間 小太郎)と弟(阿仁間 福)、そして妹(阿仁間 花子)がいる。だが、仲が良かったのは妹だけであるという。家を出てから10年間、一度として彼らと連絡を取ったことはない。故に、兄弟たちがいま何をしているのか、彼女はまったく知らない。