坊さんと貧乏神と愉快な仲間たち 鎌倉時代編
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鎌倉時代初期。 武士が「力によって秩序を守る者」として台頭し、勝者が富と正義を独占する世となった日本。 だがその裏で、敗者、貧者、奪われた者たちの嘆きが積み重なり、ついに一柱の神を呼び覚ます。 それが――貧乏神マーサルであった。 マーサルは、富や武力が必ず誰かの犠牲の上に成り立つことを憎み、 「勝ち続ける世界」を根底から覆そうと、鎌倉の世に不運と転覆をもたらし始める。 勝ち戦の将が突然没落し、富豪の屋敷が一夜で荒れ果て、 武士たちは「勝っても救われない」異変に怯え始める。 その混乱の中、各地を托鉢して歩く一人の僧・玄導が現れる。 玄導は剣も権力も持たぬが、人や国の“行く末の因果”を視る不思議な力を持っていた。 彼はマーサルの仕業であることを見抜きながらも、 武士たちを一方的に裁くことはせず、ただ問いを投げかける。 「その勝利は、誰を救ったのか」 玄導とマーサルは、かつて同じ存在であった可能性をほのめかしながら、 互いに異なる方法で世界を変えようとする。 マーサルは“奪う者”を徹底的に転覆させ、 玄導は人が自ら選び直す余地を残そうとする。 若き武士・義房は、初陣の勝利によって名を上げるが、 その裏で自らが守るはずだった村が荒廃していく現実に直面する。 一方、老将・景時は、数々の戦に勝ち続けた人生の末に、 自分が築いた秩序そのものが人々を追い詰めていたことを思い知らされる。 やがて幕府内部でも亀裂が走り、 「武力による正義」か「奪わぬ秩序」かを巡り、 剣を抜かぬ“思想の決戦”が始まる。 玄導は因果を変えすぎた代償として、記憶と力を失い始め、 マーサルもまた、人々が貧を恥と恐れ続ける限り完全には力を振るえないと悟る。 二人は最後に、武士たちに選択を委ねる。 勝ち続ける世界を守るのか。 それとも、負けても生きられる世界を選ぶのか。 最終的にマーサルは姿を消し、 玄導は名も奇跡も失った、ただの僧となる。 だが鎌倉の世には、剣ではなく言葉で争いを止め、 「勝たなくても生きていい」という思想が、静かに芽吹き始める。 それは武士の時代の終わりではない。 武士の在り方が、初めて問われた物語であった。
