マイマイは見た マッドサイエンティスト編
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不思議な力をもつ白猫・マイマイは、人知れず街を歩き、人間の中に眠る「可能性の芽」を見つけては、ほんの小さなきっかけを与えてきた。 ある雨の夜、マイマイが目を留めたのは、世間から忘れ去られた冴えない科学者・灰原トオル。かつて天才と呼ばれながらも、倫理違反を理由に研究の場を追われ、今はボロアパートで孤独な実験を続ける男だった。 マイマイが灰原に与えたのは、頭の中の未完成の思考が一瞬だけ現実に浮かび上がるという奇妙な能力だった。その力により灰原は、思考と現実の境界を越える装置《リバース・リアクター》を完成させる。それは「結果」を先に固定し、世界のほうに原因を強制させるという、因果律を無視した危険な発明だった。 装置は奇跡を起こし、事故や不幸が“起きなかったこと”にされていく。灰原は救世主として注目を集めるが、その裏側で世界は静かに歪み、誰かの努力や犠牲が見えない場所へ押し流されていく。マイマイは介入することなく、ただその行く末を見つめ続ける。 やがて灰原は、自分の発明が世界を救っているのではなく、都合の悪い現実を無理やり黙らせているだけだと気づく。すべてを手に入れるか、すべてを手放すか――選択を迫られたとき、マイマイは初めて言葉を発する。 男が選んだのは、世界を支配する力ではなく、未完成のままでも前に進む道だった。装置が失われたあとに残ったのは、名声でも奇跡でもなく、再び自分の力で考えるための「空白」だった。そして白猫マイマイは、何事もなかったかのように、次の街へと去っていく。
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