気がつくと、青年は車の運転席にいた。自分が誰なのか、なぜここにいるのか、一切の記憶がない。
助手席に座る灰色の髪の紳士・梧桐田鴉鳴は、混乱する青年に聞かせるように、静かに「雨乞いの儀式」の講義を始める。
神の聖域を穢すため、かつて人間が畜生の死体の代用品として湖に投げ込んだ「木札」。何度も繰り返されたその裏切りに神は激怒し、かつて一帯を大洪水で滅ぼしたという。
なぜ、そんな話を自分に?
訝しむ青年のポケットに、男の白い手袋が触れた瞬間、青年の体に劇的な異変が起こる。ここは陸の上、閉め切った車内。
人間の業と神の怒りが生んだ呪物を巡る、美しくも冷酷な現代伝奇ホラー短編。