呪物録 一部抜粋
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『呪物録 ― 蒐集院旧蔵 解異録 ―』 呪物とは、物に限らない。 明治六年。 越前国丹生郡・河和田村で、一人の女についての記録が採られた。 日没後、川沿いを無言で歩く女。 その後を追った者は翌朝、出発地点から数里離れた河原で発見される。 旧蒐集院はこれを記録し、封じ、保管した。 それから六十三年。 人、場所、儀式、病、事件、器物、自然現象―― 日本各地から集められた記録は、やがて七十八件に達する。 そして時代を経た現在。 戦時疎開、戦災、接収、私蔵、返還によって散逸した旧資料を、公安解異課・資料部歴史資料整理係が再び一冊へとまとめた。 それが―― 『呪物録』 本作は、明治六年(1873)から昭和十一年(1936)までに採録された怪異記録を収めた、全183ページの架空公文書・怪異資料集です。 旧蒐集院に残された原簿をそのまま読む「旧原簿翻刻」と、現代の公安解異課による「現代整理票」を組み合わせ、一つの怪異を当時の民俗的解釈と、現代の行政機関による冷淡な観察記録の双方から読む構成となっています。原因を安易に「霊」「妖怪」「呪い」と断定せず、発生条件・被害・再発防止・現在の措置を優先して記録する、公安解異課独自の資料形式を再現しています。 たとえば―― 夜道で自分の名前を呼ばれ、振り返るたびに距離を詰める「呼ばれ人」。 返事をすれば旧病名を与えられる「赤土病院跡」。 葬送の火を逆順に移し、死者の声を一度だけ聞く「返し火」。ただし記録上、これを行った複数の生者が声を失っています。 婚礼後、特定の歌と結び順を行うことで、周囲の人間から「婚姻そのもの」の記憶を書き換える「嫁返し」。 ほかにも、**夜渡り女、白児、黒雨僧、帰らず辻、人数の合わぬ宿、赤縄施錠、月喰い魚、片袖人形、眠らない石櫃、獣面金庫、無底箱、そして「記録第七十八欠番」**まで、七十八件を収録しています。 また、本書における「呪物」とは器物だけを指しません。 人型の存在。 土地そのもの。 実行することで成立する禁法。 疾病。 繰り返される事件。 持ち運べる器物。 異常な自然現象。 そして、そのいずれにも分類できないもの。 旧蒐集院資料に残された「呪物」「怪器」「祟」「禁法」「疫」「化生」「異所」といった曖昧な語を、公安解異課が八分類へ再整理した、という体裁になっています。 さらに資料中には、視認注意・聴取注意・接触注意・伝播注意・位置異常・記憶影響などの警告表示が存在します。 黒塗りは検閲のためではありません。 読むこと。 見ること。 復唱すること。 模写すること。 手順を理解すること。 それ自体が発現条件となる資料について、公安解異課が意図的に情報を削除した痕跡です。 怪談集として。 TRPGの資料として。 架空政府機関・SCP系文書・民俗学ホラー・近代日本怪異が好きな方の読み物として。 「怪異を倒す」のではなく、 **“どう記録し、どう保存し、どう次代へ引き継ぐか”**を読む資料集です。 ――記録は、終わっていない。 収録内容:全183ページ/怪異記録78件/PDF形式 採録年代:1873年~1936年 作中編纂:公安解異課 資料部 歴史資料整理係 取扱区分:部内限り・複写管理



