若泉 K氏について
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【注意事項】 本作品はフィクションです。 作中に登場する「公安解異課」、事件、組織、人物関係、調査記録、会話、文書等は創作上のものです。 一部、実在の人物・地域・歴史的出来事・文化・民俗資料等を参考にしていますが、実在する個人・団体・行政機関・宗教・地域社会の見解、活動、事件等をそのまま描写したものではありません。 作中の**「若泉 K氏」**は、実在の人物である若泉敬氏の著作・思想・歴史的背景を着想源の一部としていますが、本作品内における調査、公安解異課との関係、残置資料、写真、聴取記録、その他の出来事は創作です。 また、沖縄の綱引き・綱作り等の文化についても、実在する民俗・文化を参考にしつつ、本作品独自の設定・地域・人物・出来事を含みます。特定の地域文化、信仰、慣習を怪異または迷信として断定・評価する意図はありません。 実在の人物・団体・地域等への問い合わせはご遠慮ください。 1996年、福井県。 公安解異課に持ち込まれたのは、ある国際関係研究者――**「若泉 K氏」**の死後に残された資料だった。 「なぜ、彼は服毒自殺を図ったのか」 「沖縄について、何をそこまで背負っていたのか」 残された著書、書簡、写真、照会記録を追ううち、調査は沖縄のある地域で続けられてきた綱作りの習俗へと行き着く。 しかし本件において、公安解異課が調べるべきものは怪異だけではない。 古い綱を保存すること。 作り方を記録すること。 道具を残すこと。 そして、来年も誰かがそれを作れること。 それらは、同じ「保存」という言葉では括れない。 高齢化、仕事、材料の確保、作業場所、食事、送迎、見守り、記録、所有権。 一つの文化を残すために必要だったのは、祭りの日に見えるものだけではなかった。 本資料は、1996年から2000年にかけて公安解異課が行った、福井県および沖縄県にまたがる一件の連絡調査を、照会書・聴取記録・FAX・映像記録・写真・協議書・決裁文書など全96頁にわたり再構成した内部資料集である。 調査の途中には、古い写真や映像の中で繰り返し確認される、氏名の分からない一人の補助者についての記録も含まれる。 だが、本件の目的はその存在を排除することではない。 公安解異課が最後に判断したのは、 「異常なものを取り除くこと」と「文化を守ること」は、必ずしも同じではないということだった。 K氏が本当に何を思い、なぜ死を選んだのか。 その答えは、最後まで一つには定まらない。 残るのは、誰かが持っていた綱の端と、 それを次に受け取る人間の記録だけである。




