光秀天海シフト妄想記
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天正十年、本能寺の変の直後。 山崎の戦いで敗れた明智光秀は、羽柴秀吉の執拗な追討を受け、近江の山中で死を装い歴史の表舞台から姿を消す。世には「光秀討死」の報が流れ、彼の名は逆臣として永遠に葬られるが、実際には一人の男がすべてを失い、名を捨てて生き延びていた。 武士としての理想と、天下という現実の残酷さに打ちのめされた光秀は、剃髪して僧となり、放浪の果てに「力で時代を変えること」の限界を悟る。秀吉の覇業が進む一方で、その政権が抱える脆さを見抜いた彼は、表に立たず、影から時代を支える道を選ぶ。 やがて彼は天海と名乗り、関東で静かに勢力を蓄える徳川家康と出会う。天海は剣や軍略ではなく、時間、制度、思想をもって天下を語り、家康に「持続する政権」の構想を授けていく。関ヶ原の戦いを経て徳川政権が成立すると、天海はその精神的支柱として江戸の都づくりに深く関与する。 寺社配置や信仰政策を通じ、天海が密かに成し遂げようとしていたのは、戦乱と裏切りが生んだ怨念を鎮め、新しい時代に禍根を残さないことだった。信長、秀吉といった英雄たちは神格化される一方で、明智光秀という名だけは完全に闇へと封じられる。それは、かつて主君を討った男自身が選んだ、最大の贖罪でもあった。 老境に至った天海は、自らが歴史に名を刻まれぬ存在であることを受け入れる。天下を動かしたにもかかわらず、勝者として讃えられることのない生涯。しかし彼は悟る。名を残す者は時代に消費され、名を捨てた者だけが時代を越えて生き続けるのだと。 こうして、逆臣・明智光秀は歴史から消え、無名の僧・天海として日本の礎を築いた。 彼の正体を示す確証は、最後まで残されない――それこそが、彼が望んだ「真の勝利」だった。
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