街は滲んでいる
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この本に興味をもってくださりありがとうございます! 【本作は】 ↓ “旅人”が街で出会った“老婆”と対話し、 街の人々や老婆の物語を一つ一つ読み解いてゆく物語。 一話ごとでも楽しめる短編小説です! 旅人は街に辿り着き、 老婆と出会うまで心休まる事がありません。 暖炉のある家を窓越しに見つけ、老婆と出会う事に… 老婆と旅人の深い語り口が必見です。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 風来坊な旅人と、街を愛する老婆の感動系。 ▷街に執着のない旅人だが、凝り固まった常識がほぐされてゆく ▶老婆の語る話は、嘘か本当か 両者ともに魅力的な人物で、 どちらかに強く感情移入できること間違いなしです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー ①ノスタルジックな雰囲気が好き ②バディ感のある会話のやりとりが好き ③最後、感動したい。しっとり泣きたい。 といった方に、お楽しみいただけると思います! 一話完結で読み進めやすく、寝る前にもオススメです! 寒い季節、暖炉で語り合う二人を思い浮かべながら ぜひ読書をお楽しみください^^ ▽ これからもたくさんの読みやすい短編集を本にしてお届けします! 新作の通知のため、ぜひ BOOTHのフォローをして 応援よろしくお願いします! また、割引キャンペーンやプレゼント企画の告知などもしますので、 SNSのフォローもよろしくお願いします! Ⅹ(旧Twitter):@say6novel 著者:セーイ6
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更にもう一話ぶん! noteかPDFで試し読み出来ます! note↓ https://note.com/say6novel/n/nd41d2b284bd9 ------------------------------ 『旅人の着く街』 旅人が長い道のりの末、ある街へ辿り着いた。 その街は白く、ところどころ灰がかっていた。 雪の降り積もる、寒い街だ。 灰が雪に混じっては、くすんで降り積もっていた。 凍えるような、冷たい街だった。 旅人は寒さにかじかむ手をすり合わせる。 しかし一向に、手の温まることはない。 「どこかで暖を取ろう…」 唇を震わせて、そう呟(つぶや)いた。 街を見渡せど、あてもなく。 この雪と灰の中、すれ違う人も見当たらずにいた。 あるのは凍った路面と、氷の張り付く窓ガラスが並ぶ電気屋、交差点の横に佇む雪の降り積もった銅像くらいだろうか。 旅人は足を止める余裕もなく、一歩一歩を踏みしめ街を彷徨(さまよ)った。 「あそこは入れそうか…?」 やっと入れそうな場所を見つけた。カフェのようだ。 扉に手を掛けてみるが、凍り付いてしまっているのか開かない。ドンドンと扉を叩くも、店の中から人が出てくる様子はなかった。 「おーい!コーヒーを一杯だけくれ。」 旅人はなんとか温まろうと、テイクアウトの小さい受付から声をかけたが、たった一杯のコーヒーすら出てくることはなかった。 漏れ聞こえるジャズの音を背に、仕方なく次のあてを探し歩いた。 「おっと。」 そんな旅人の前を横切る犬、小さな犬だった。 旅人は驚いて歩みを一瞬止めたが、小犬は一瞥(いちべつ)もくれることなく走り去っていった。 「犬はいるんだな。ここはまるで、、」 そう、まるで…“透明人間の街”のようだった。 誰とも会うことが出来ない。 どこを見渡しても、目の合う人はいない。 透明な人々の暮らす街、旅人はここがそうなのだと思い始めていた。 誰の助けも借りることは出来ない。疲れた体を癒す場所もない。このまま暖を取れずに凍えて死んでしまう。 そう不安が込み上げるのをグッと堪(こら)えて、旅人は先を急いだ。とにかく寒さを凌げる場所へ。灰にむせながら、足を動かした。 遠目に映るのは駅だろうか。 足元(あしもと)には子供の落書きが雪に隠され始めている。 旅人は天を仰いで、立ち尽くす。 やっと辿り着いた街で、途方に暮れてしまった。 街を必死に歩き回る自分が馬鹿らしくなってしまった。 「はは、人のいない街を旅しているみたいだ…」 遠くで聞こえる話し声や、道を行く馬車の音がする。 しかし、誰も居らず、誰も頼れない。 すべては旅人の作り出した幻想にすぎない。 ふと、目の端にぼんやり映る揺らめきがある。 火だ。 旅人は思わずその赤い光へと歩み寄る。 それは古ぼけた家、道に面した窓から覗(のぞ)く一室だった。 大きな暖炉に薪がくべられ、パチパチと弾けている。 暖かそうな部屋だ。 この部屋で休ませて貰えたなら命拾いできるだろう。 旅人はそう思った。 まるで火に群がる虫のように、旅人は暖炉へと引き寄せられてゆく。部屋に人影は見当たらない。 家の扉を叩くことすらせず、窓に手を掛けた。 パリッ、と氷が剥(は)がれ落ちたかと思えば、窓は開いた。 その部屋もまた、旅人の侵入を心待ちにしていたかのようだった。 「そうさ、誰がいたって関係ない。ここは“透明人間”の街なんだ。」 誰に言ったか。己への言い訳か。旅人が灰混じりの雪を払い落とし、それらは部屋の暖かさに瞬く間に溶ける。 暖炉へ手を伸ばし、火に身体を当てる。 じんわりと温かく、疲れがほぐれるようだと感じた。 こじんまりした部屋。暖炉そばの床へ腰を落とす旅人。 家具もまともに揃っておらず、やはり透明人間が暮らしているのか、はたまた貧乏暮らしなだけか思案していると腹がぐぅ、と鳴った。 「やれやれ、やっと腹の虫を気にできるのだな」 降って湧いた寝床を素直に喜びこそすれば、次は食事に困ってしまう。旅人にとってはよくあることだが、特にこの街の寒さは厳しかった。 どうしたものかと暖を取る旅人に、声がかかった。 「なにか振る舞いましょうか。」 「え、あんた、いつからそこに…」 声の主は部屋の隅、暗がりのロッキングチェアに座る老婆だった。部屋へ忍び込むのに一生懸命な旅人は、慌てて振り向き、老婆へ気づかずにいたことを驚いた。 「すまない、悪さをする気はないんだ。貴方が望むなら、すぐに出て行こう。ただ慣れない寒さに暖を取りに来ただけだ。」 「えぇ、構いませんとも。今晩は特に冷えますよ。よければこの部屋で夜を越してくださいな。」 「…いいのか?俺は勝手に忍び込んだ旅人だぞ。」 「それを決めるのはアナタ、駄目なら出てお行きなさい。私はこの寒い夜、話し相手が居たら嬉しいわ。」 老婆は落ち着き払って言う。旅人は、この提案をとてもありがたく思い、甘えることにした。 一度浮かせようとした腰を再び深く降ろすと、暖炉の火に当たる。また、旅人の腹がぐぅ、と鳴った。 「本当に、たいしたものはないけれど。」 老婆は椅子からゆっくり立ち上がり、部屋を出てゆく。 そして再び部屋へ戻ると、小さなカップが一つ盆に乗せられていた。老婆は旅人の前へ盆を降ろすとそれを差しだす。旅人へ振る舞われたのは温かいスープだった。 「どうぞ、召し上がって。」 老婆はロッキングチェアへ腰掛け直した。 「…ありがとう、いただくよ。」 旅人が口をつけると、スープに味はしなかった。 いや、微(かす)かに塩気があったが、味と呼べるほどのものではなかった。旅人は驚いて、カップから口を離す。 「おいしく、ないでしょう。」 老婆が言う。 暗がりから、申し訳なさそうな声が響いた。 旅人はそれですべてを察し、ただありがたいと、カップへ再び口をつける。 「貴方のスープは温かい。それがとてもおいしいよ。」 旅人は心からそう思った。 老婆はこの透明な街で初めて出会った“人間”だった。 「なにか、お礼がしたい。」 「お礼?そうねぇ、なら頼めるかしら。」 「なんでも言ってくれ。俺に出来ることなんでも。」 「じゃあきっとできるわ。私の今晩の話し相手を。」 老婆の眠れぬ夜を、旅人は共に過ごすことにした。 暖炉に温まりながら、味のしないスープを啜(すす)り、旅人は老婆の話に相槌(あいづち)を打つ。 さぁ、老婆が話すのは、ここ“透明な街”のお話。 旅人は街で起きていた、数々の出来事を知る。 ------------------------------ ここまで読んでいただきありがとうございます。 他にも多数の試し読みをご用意しております! 少しでも気に入った作品あれば、続きのご購入をご検討くださると幸いです! 今後とも応援よろしくお願いいたします。
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