陶芸家、ふたり
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この本に興味をもってくださりありがとうございます! 【本作は】 ↓ 非公式COCシナリオ『轆轤-ろくろ-』の前日譚となります。 陶芸家の人間模様から、 『轆轤-ろくろ-』本編の背景を描きます。 ※試し読みから本編のネタバレがございます。 本編を遊ぶ予定の方はお気を付けくださいませ。 ーーーーーーーーーーーーーー 『轆轤-ろくろ-』本編も公開中! ▼BOOTHページ https://say6shop.booth.pm/items/6742783 ーーーーーーーーーーーーーー ①『轆轤-ろくろ-』が楽しかった! ②『轆轤-ろくろ-』の登場人物が好き! ③『轆轤-ろくろ-』の世界観を深掘りたい! といった方に、お楽しみいただけると思います! 短編で読みやすく、 本編で語られることのない背景がよく分かります。 ぜひ本編と合わせてお楽しみください! ▽ これからもたくさんの読みやすい短編集を本にしてお届けします! 新作の通知のため、ぜひ BOOTHのフォローをして 応援よろしくお願いします! また、割引キャンペーンやプレゼント企画の告知などもしますので、 SNSのフォローもよろしくお願いします! Ⅹ(旧Twitter):@say6novel 著者:セーイ6
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更にもう一話ぶん! noteかPDFで試し読み出来ます! note↓ https://note.com/say6novel/n/nc9c589525440 ------------------------------ 『陶芸家、ひとり』 “僕”は陶芸家。 巷では天才陶芸家として名を馳せている。 どの分野でも天才と呼ばれる人物はいるが、それが自分自身であることはあまり想像ができないものだ。 若くして才能を開花させ、運良く世間に周知された僕は「天才」だなどと呼ばれる器を持ち合わせているのか、不安になることもしばしばだ。 僕はまだ何も、満足のいく作品を生むことなどできていない。持て囃(はや)され天狗のように鼻を伸ばす暇があれば、土を捏(こ)ねては泥に塗(まみ)れる日々であるべきだ。 より良い皿を創りたい。それだけでここまで来た。 気づけば評価を受けていた。賛辞を述べられており、その言葉にお礼を言い、手を取っていた。 それもまた良い刺激になり、僕の皿に艶(つや)を出した。 僕は“陶芸家”。 いつの間にか、世間で認められていた幸運な陶芸家。 土いじりに長けた一握りの才能があったとは思わない。 あったとすれば、鈍感である才能だけ。 捏ねた土も、焼いた皿も、瓶や壺も、ただ手元にあるだけで嬉しかった。土を捏ねれば思い浮かべた“かたち”をとるだけで嬉しかった。 運も良かった。 写真家の友人がいた。恋人が周囲に広めてくれた。家族は趣味を見守り応援してくれた。 背中を押され、自ら賞へ応募をするようになった。 失敗すれば笑い、上手くいった日は語り飲み明かした。 いつだって、支えは目の前にあった。 集中して我を忘れることよりも、新しいものに常に移り気でいた。作品は出来ずとも、手を止めることはなかった。日々を過ごせばそれだけで、また一つ生まれた。 季節の一つ過ぎるたび、渾身の作が取り上げられた。 行き詰まることもあれど、その時には周囲に連れられ、海に山に駆り出された。 ぱっと遊べば気も晴れ、また陶芸に没頭した。 豊かに経験し、吸収し、迷い、笑い、僕はただまっすぐに土を捏ねていられた。 それ以外の事に、気づかずに。 鈍感であったのだ。 いくつか賞を取った頃、僕は土を捏ねることを仕事にすると決めた。 食える確信があったわけでも、軌道に乗るような兆しを見たわけでもない。 ただ鈍感に、夢にしようと思った。 自分の創る皿に、命が宿ることを夢見ただけだ。 それを決めたとき、周りは仕事を決めあぐねていた。 彼等の迷惑になると思い、単身この世界へ飛び込んだ。 一から自分の力を試したかった。 各地を転々とするように暮らした。 どこでも作品は生まれた、土を捏ねられた。 新しい場所、新しい師、新しい人脈に、新しい夢。 一年も経たず、僕はみるみる名が売れてしまっていた。 実力だとは思えなかった。未熟な自分を応援してくれている優しい人々のおかげだ。 ただ、出会う人に皿を見せれば、みんな笑ってくれた。 喜ぶ笑顔を見せてくれ、それが一番の糧(かて)だった。 陶器を売って日銭(ひぜに)を稼ぎながら、各地で賞へ出品した。 そんな暮らしを続けていた、ある日。 ある陶芸家、ひとりと出会う。 「黒磨(くろま) 和白(わしろ)」。 同い年の陶芸家だった。 地方でそれなりの規模の賞レースがあった。 腕試しに出品。 そこで彼、「黒磨 和白」の作品を目にする。 平凡だった。 だが、繊細で丁寧。 基本に忠実な作風は、陶芸のお手本とでも言うべきものだった。 結果は二位、「黒磨 和白」の作品が銀賞だった。 あっけなく、僕は金賞を受賞した。 僕の作品は“挑戦”で、彼の作品は“置き”、技術は互いに遜色(そんしょく)ないように思えた。 このとき、僕は初めて『才能』とやらを意識した。 「ねぇ、君って天才…だね。」 このとき、彼が声をかけてきたのには驚いた。 「え、あ、うん。そうみたいだ…」 僕は生返事で、恐らく生まれて初めてであろう驕(おご)りに満ちた言葉を吐いた。 「なんだよ、それ。井の中の蛙だってことくらい、自分が一番分かってる…」 地元の賞レースを、いつも金賞で飾っていたのだろう。 そして、それ以上に手を伸ばすこともせず、小さな町から飛び出せずにいた。 彼は僕に簡単に見透かされて、それにきっと気がついていて、それでも強がりを言いに来る。平凡な陶芸家だ。 「なぁ、どうやってあんな作品創るんだ。俺にも、教えてくれよ…。」 たどたどしく言葉を詰まらせる彼の真っ赤な耳を見て、僕は心に決めた。 今日の賞金で充分に目標を達成することになっていた。 それもまるで、運命のように。 「ねぇ、君。自分だけの工房が欲しくない?」 僕は見つけた。 片田舎の町。 それは至極、平凡で繊細な。 陶芸家、ひとり。 ------------------------------ ここまで読んでいただきありがとうございます。 他にも多数の試し読みをご用意しております! 少しでも気に入った作品あれば、続きのご購入をご検討くださると幸いです! 今後とも応援よろしくお願いいたします。
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修正メモ
2025/03/31 ・本文、試し読み、の軽微な修正。(誤字脱字の類。) DL内容物の変更で対応済み。再DL推奨。